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ESPNで全米放映された高校野球「日本のフィールド・オブ・ドリームズ」は何を伝えたか

18年の横浜隼人と花巻東に密着、メンバー漏れで涙する球児のシーンも

 冒頭では、大観衆の声援に沸き上がる甲子園の映像とともに、後にメジャーリーガーとなった高校野球のスター選手が映し出された。松井秀喜さん、西武の松坂、エンゼルスの大谷、ヤンキースの田中、カブスのダルビッシュ、マリナーズの菊池ら。彼らを輩出した日本の高校野球への関心をいざなうように始まる。

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 そこから続くストーリーは2018年の横浜隼人高と花巻東高の野球部を中心に進んでいく。

 改めて書くまでもないが、2018年は大谷翔平がメジャー移籍した年だ。米国内(米国だけではないだろうが)で、日本の育成情報の需要があると感じられたことも、制作を後押ししたのではないか。だからこそ、花巻東を取り上げたのだと思う。

 どこまでネタバレしていいのかわからないが、私の目に飛び込んできたシーンをいくつかご紹介したい。

 横浜隼人高の選手たちが、声を出しながら、足を揃え、砂煙を上げながら走る。

 丸刈りにし、揃いの練習着を着た選手たち。はきはきとあいさつをし、監督や上級生の話を聞くときには、姿勢を正し、しっかりと話し手を見つめている。きっちりと並べられたシューズが象徴的に映し出される。

 野球部は100人を大幅に超える大所帯。ベンチに入れない選手のほうが圧倒的に多い。しかし、チームが向上し、勝つためには、全員が対話をし、ひとりひとりが役割を果たすことが重要だと、選手たちは教えられている。ベンチ入りメンバーの発表の日、漏れた3年生たちのなかには、涙を拭う者も。

 しかし、慰め励ましあい、試合に出られるメンバーも、そうでない選手も、同じように練習を始める。

 この連載でも何度かご紹介してきたように、米国の高校運動部にはトライアウトがある。野球部もベンチ入りできる人数だけを入部させる。そこから漏れた生徒は2軍へ行くが、2軍もベンチ入りできる人数だけで編成する。全ての州の規則かどうか確信はないが、高校運動部の2軍は下級生の育成という意味合いが強く、競技の公平性のためもあって、最終学年の選手は2軍ではプレーできない。トライアウトに落ちた米国の12年生(日本の高3)には、高校野球部の一員としての青春の日々はない。スタンドで応援することもなければ、一緒に練習する機会もない。

 どちらが正しく、どちらが間違っていると判断することは、私にはできない。たとえ、試合に出られなくても、ひとりひとりに役割があり、チームの一員であることに誇りを持てるように導くのも教育だろうし、試合に出られないのに集団に属する必要はない、別のどこかで居場所を掴むように示すのも教育であるだろう。

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谷口 輝世子

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。近著に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか――米国発スポーツ・ペアレンティングのすすめ』(生活書院)ほか、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。

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