【今、伝えたいこと】指導者は「上機嫌であれ」 女子バスケ大神雄子の哲学「人間は葛藤して生きている」
大学院でコーチングを勉強、様々な指導者のコーチング論に共通することは…
コーチングにはいろいろなアプローチや方法があるが、大神氏の哲学は極めて明快だ。
「とにかく『上機嫌であれ』ということは常に心掛けています。パッションを持ち、ポジティブな言葉をかける存在でありたいと思うので。大学院では、様々な指導者の方の論文を読みますが、どのコーチング論にも当てはまることがある。それが戦術や知識を上回るのは人間力だということ。上機嫌を心掛けながら、自分の人間力を磨いていきたいですね」
YouTubeやオンラインサロンの反響は大きく、バスケットボール界やコーチングに対する「思いのある方がすごく多いなという印象があります」という。コロナ禍により生まれた「STAY HOME」の時間ではあるが、新たな出会いや発見を得る機会になっている。
「汗を流したり、協調性や団結力をつけたり、スポーツ本来の良さを知るためには、どうしても集まらないとできない部分は、もちろんあると思います。ただ、考えや思いを共有したり、知識を学んだりというのはコート上ではなくてもできる部分。またコートでプレーできる日、指導できる日は来ると思うので、この数か月をどう過ごすか。その時間の使い方次第で、数か月後の風景は変わってくるんじゃないかと思います。
時間というものを考えた時、二度と同じ時間は戻ってきません。やること、やれることは人それぞれですが、それをどう自分で見つけるか。気付くための行動や発信は、コートでなくてもできること。本を読んでもいいし、人の話を聞いてもいいし、挑戦できることは周りにいっぱいあると思います」
実際、大神氏がYouTubeでワンハンドシュートに関する討論会を開催したところ、「ワンハンドシュートに挑戦したい」という現役選手から連絡があったという。ゴールリングの設置されていない駐車場で練習する動画を毎日のように送ってくる選手に対し、大神氏は気が付いたポイントをアドバイス。「これも一つのコーチングであり、選手の練習方法なのかなと。新しく選手に見つけてもらえた感じです」と笑顔を見せる。
また、様々なアスリートが積極的に発信する今だからこそ、最大値化できるスポーツの魅力があると感じている。
「今、いろいろなアスリートが怪我をした時どう乗り越えたとか、自分の経験をリレーで発信していますよね。みんなバスケットを始めれば個人のスキルやチームの戦術にフォーカスすると思いますが、今だったらいろいろなアスリートの声に耳を傾けることができる。他競技の選手と共通点を見つけたり、参考になる点を見つけたり、新しい発見もあると思います。競技は違えど共通する部分や繋がる部分はあるはず。それが新たなモチベーションになることもあると思いますね」