【今、伝えたいこと】プロ野球から介護業界へ 集団感染リスクと闘う江草仁貴「社会的受け皿なくせない」
新型コロナウイルス感染拡大により、スポーツ界はいまだかつてない困難に直面している。試合、大会などのイベントが軒並み延期、中止に。ファンは“ライブスポーツ”を楽しむことができず、アスリートは自らを最も表現できる場所を失った。
連載「Voice――今、伝えたいこと」第4回、介護業界に転身した元投手のメッセージ
新型コロナウイルス感染拡大により、スポーツ界はいまだかつてない困難に直面している。試合、大会などのイベントが軒並み延期、中止に。ファンは“ライブスポーツ”を楽しむことができず、アスリートは自らを最も表現できる場所を失った。
日本全体が苦境に立たされる今、スポーツ界に生きる者は何を思い、現実とどう向き合っているのか。「THE ANSWER」は新連載「Voice――今、伝えたいこと」を始動。各競技の現役選手、OB、指導者らが競技を代表し、それぞれの立場から今、世の中に伝えたい“声”を届ける。
第4回は阪神、西武、広島で15年の現役生活を送った左腕、江草仁貴氏が登場する。通算349試合に登板した元投手は、2017年を最後に現役を退いた後、介護業界に転身。高齢者向けのリハビリ型デイサービスを経営する一方で、大阪電気通信大学硬式野球部コーチとして指導者の道を歩み始めた江草氏が今、伝えたいメッセージとは。
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2017年9月に15年にわたる現役生活にピリオドを打った江草氏は現在、広島市内で高齢者向けのリハビリ型デイサービスを経営する。政府の緊急事態宣言を受けて、外出自粛や一部の業種に休業要請が出されているが、「閉めるかどうか、本当に何回も会議をして話し合いました」と悩み抜いた末、今なお来所を希望する高齢者を受け入れている。
「高齢者は新型コロナウイルスに感染するとリスクが高いので、用心されて『ちょっと休ませてもらうね』という方も多いです。ただ、高齢者の方はリハビリを続けないと一気に筋力が落ちてしまい、コロナが終息した後で動けるか分からない部分も多くなってしまう。なので、希望される方にはなるべく運動できる場所を提供していきたい、社会的受け皿をなくしてはいけないという意味でも営業を続けています」
もちろん、福祉施設や介護施設はクラスターとなる可能性を秘めている。だからこそ、来所する高齢者はもちろん、働くスタッフの安全を第一に考え、徹底した対策を取っている。
「不安はどうしても付きまとうので、いかに不安を和らげられるか。手洗い、うがい、除菌はもちろん、自分が感染源になった場合には人の命に関わることなので、私を含めてスタッフは自分の行動に責任を持って、不要不急の外出はしないよう徹底しています」
注意に注意を重ねての営業が続くが、高齢者から届く「ここがないと本当に困る」という感謝の声を励みにしているという。