「中途半端なら止めちまえ」 トライアスロン東京五輪候補・佐藤優香に刺さった父の言葉
転機となった中学3年生の秋、競技に対する「姿勢が中途半端だったんです」
徐々に練習に打ち込めなくなった佐藤に転機が訪れた。中学3年生の9月に出場した全国大会で、年下の選手に負けてしまった。
「すごく悔しい思いをしたんですけど、当時付き合っている彼がいて、遊ぶことが楽しくなってきて、本当にトライアスロンに対する姿勢が中途半端だったんです」
トライアスロンと真剣に向き合いたいのか、なんとなくフェードアウトしてしまうのか。態度が煮え切らない娘に雷を落としたのは、熱心だった母ではなく、父だった。
「『中途半端なら止めちまえ!』と言われました。自宅で夜中に呼ばれて『お前、ここに座れ』と正座させられ、怒鳴られました。実は父に怒られるのは、それが初めてだったんです。それまでまったく怒ったことがなかったので衝撃でした。怖かったです……(苦笑)」
普段は何があっても温かく見守ってくれていた父を怒らせた。その現実をすぐには受け入れられず、その時は「お父さんなんて大嫌い!」と自室に入ってしまったが、振り返ると父の一言がなければ今の自分はなかったという。
「あの一言がなかったら、トライアスロンの道には進んでいなかったかもしれません。中途半端なまま止めていたかもしれないですね」
トライアスロンで頑張ろう。そう決めた後は「迷いはなかったです」と断言する。母と一緒にいろいろな高校を調べ、トライアスロンに打ち込むにはここだ、と選んだ進学先が、日本橋女学館高(現・開智日本橋学園高)だった。進学と同時に、飯島健二郎氏が率いる「TEAM Ken’s」のメンバーとなり、競技に専念。2007年には日本ジュニアトライアスロン選手権で優勝、2009年にはITUトライアスロン世界選手権横浜大会ユース部門で優勝するなど実力を伸ばし、現在の礎を築いた。