十種競技の日本記録保持者・右代啓祐が明かす “恩人”武井壮から受けた「衝撃」
停滞から再び上昇への期待「自分の中でできる自信があるんですよ」
年齢も経験も重ねた今は、量より質に重点を置く練習を積みながら、東京五輪の出場を目指す。
「練習は『必ずこれをやらなければいけない』じゃなくて、その日の自分の体と対話しながら決めます。今日は疲れていると思ったら予定していた種目を変更するし、逆に動けるなと思ったら負荷の高い練習に変えたり、臨機応変に。100メートルを走るのでも10本と決めるんじゃなくて、いい走りができたら8本でも6本でもいいなと思えるようになりました。僕の場合、十種競技なので単純に人の10倍は練習が必要なんですよね(笑)。でも、練習に狙いを持つことで、これまで6時間あった練習量がだんだん削られて4時間に凝縮できたり、怪我をしなくなりました」
2014年に日本最高となる8308点をマークして以来、記録を更新できていないが、今夏に控える東京五輪に向けて上昇気流に乗るビジョンは描けているという。
「2011年に8000点を超えた後に少し低迷して、そこから2012年のロンドン五輪へ山を作れた。その後、また2013年にあまり良くなかったんですけど、2014年にもう1つ大きな波を作って日本記録を出した。人間ってベストを出した後に少し落ちて、スランプを迎えた時、競技を辞める人とまた上がる人と分かれると思うんです。上がる人は圧倒的に少ないんですけど、僕はスランプと向き合い行動することで、上がれるという結果を出した。落ち込んだところから、もうひと山作る=日本記録を更新するという道筋を経験しているから、自分の中でできる自信があるんですよ」
こういう自信が持てるのも、33歳の今でも自分自身の中に可能性を感じているからだ。
「まだ自分の力が100%出し切れていないから、競技を続けているんだと思います。大きな舞台で大きなことをやって引退したいなと思っていて、ちょうどいいタイミングで東京オリンピックがやってくる。そこで結果を出せば、この5、6年間が報われると思うので。ただただ本当に強くなりたいだけで、毎日食事からトレーニングからNo.1のことをやっているつもりなので、そろそろ報われてもいいかな(笑)」
五輪出場権を手に入れるため、大きな鍵を握るのは6月に開催される日本陸上競技選手権大会だ。自分の可能性を信じながら、最後の最後まで追い求める。
(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)