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パティシエに憧れた少女がなぜやりを投げるのか 日本記録保持者・北口榛花の覚悟

将来への不安を感じながらも、北口はやり投と向き合っていった【写真:荒川祐史】
将来への不安を感じながらも、北口はやり投と向き合っていった【写真:荒川祐史】

漠然と抱いていた将来への不安…「これで生きていけるのかな?」

 水泳と陸上の二刀流を始めたが、結局、高校1年生の秋に選んだのはやり投だった。入部から約2か月後の北海道大会で優勝すると、2年生でインターハイ優勝。3年生になると日本を飛び出して世界ユースで金メダルを獲得するなど大躍進を遂げた。日本大学に進んだ後は肘を故障したりコーチが退任したり、決して順風満帆とはいかなかったが、一念発起のチェコ修行。「今のままではいけない。自分でなんとかしなくちゃ」と自ら行動した結果、2019年5月の木南記念でフィールド種目の日本人選手では東京オリンピック参加標準記録突破第1号となった。

「もともとスポーツは大好きで、東京でオリンピックが開催されると決まってから、何らかの形でオリンピックに関わりたいと思っていたんです。スポーツを通じて世界に出ていきたいという気持ちがあったので、こうしてやり投に出会ったからこそ、世界のいろいろな国に行くことができて、日本だけじゃなくて世界と繋がりを持つことができた。こういう出会いを与えてくれたのは、間違いなくやり投。やり投に出会えたことが、本当に大きな転機だったと思います」

 背筋をしゃんと伸ばしながら、やり投との出会いを感謝した北口だが、こう思えるようになったのも最近の話だという。やり投を極めたい気持ちはあっても、競技を続けた先の将来がどうなるのか、まったく思い描けなかったからだ。

「やっぱり世の中に出た時、勉強って大切じゃないですか。でも、高校生の時からやり投を一番に考えて、勉強を二の次にしてきてしまったので、すごく先の人生に不安を感じていたんです。すごく(笑)。女だし、この先ちゃんと生きていけるかなって。こんなにやり投を一生懸命にやっているけど、やり投で職に就けるのかも、生活に必要なお金が稼げるのかも分からなくて、『これで生きていけるのかな?』って不安に思っていたんです」

 こういった不安は、北口に限らず、大好きなスポーツを極めたいと考える高校生や大学生なら、一度は頭をよぎったことがあるだろう。野球やサッカーなどのメジャースポーツであれば、プロという明確な目標を立てやすいが、将来のイメージが描けないスポーツが大半という現状がある。こういった不安を解消するような道を示し、サポート態勢を整えることが、競技の発展に繋がるのかもしれない。

 将来への不安を抱えながらも、競技に専念する決意をした北口に、陸上の神様は微笑んだ。2020年3月に大学を卒業する北口は、JALにアスリート採用され、4月から社会人の扉を叩く。大学生アスリートから社会人アスリートとなる北口の歩む道は、その後に続く子どもたちに1つの可能性を示すことになるだろう。

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