マラドーナを封じた元Jリーガー 「W杯優勝の自信がない」チームはなぜ変貌したのか
仲間を信頼し、マラドーナのマークを離れて攻撃参加
「それから4週間は、ビールを一滴も飲まないくらい集中したよ」
そう言いながら、わざわざそれがジョークなのを説明するのが律儀なところだ。
「いや、ホントは食事の後とかに飲んだけれど、そのくらい集中したというたとえだよ」
大きなヤマは、決勝トーナメント初戦のオランダとの試合だった。2年前には、地元開催の欧州選手権準決勝で1-2と敗れていたが、2-1で雪辱する。
「オランダ戦は個人的にも大成功だった。欧州選手権の時は、怪我でオランダ戦を欠場。僕が出なかったことが敗因だと言われた。それから代表に必要な存在になったと自覚したんだ」
決勝の相手は連覇を目指すアルゼンチン。2大会連続で同じカードとなったが、4年前とは完全に立場が入れ替わった。結果は1-0だったが、ブッフバルトはディエゴ・マラドーナのマークを離して何度も攻め上がった。
「相手は中心選手が3人も出場停止で、マラドーナ以外はどこをとっても僕らのチームの方が上だった。攻撃に出ても、他のメンバーがカバーしてくれるから心配はなかった」
大柄だが、実はテクニシャン。チーム内でのニックネームが「ディエゴ」だった男は、後に在籍した浦和レッズでも機を見た攻撃参加でサポーターを魅了した。
【了】
加部究●文 text by Kiwamu Kabe