地域の学童から卓球全国レベルが育つナゾ 基礎は劣る、でも勝てる…沖縄発「非・矯正」育成メソッド

自由な環境下で「自主性」と「競争心」が生まれる理由
指導のスタンスも特徴的だ。
もともと未経験だった雅之さんは専門書を読み込んだり、指導用DVDを見たりして知識を身につけた。子どもたちと遊ぶ中で自身も上達し、近所の中学校で外部コーチを務めたこともある。高校を卒業した5年前に帰省し、それから家業を手伝っている美優さんも、全国レベルの環境で磨いた技術がある。
ただ、子どもたちに対しては、初めに基本的なラケットの握り方や体の使い方などは教えるが、その後のフォームは個々が打ちやすい形を尊重する。「みんなバラバラ」と笑う雅之さん。美優さんも「よほどのことがないかぎり、フォームを矯正することはありません」と続ける。
例えば、同じフォアハンドでも、踏み込み足を左右どちらにするかは選手によって違う。「その子がしっくりくるフォームが正解」という考え方だ。ただ、まったく教えていないかというと、そんなことはない。美優さんは「その子の強みを伝えた上で、それが生きるような戦い方を考えて、『こうしてみたら?』と提案をしています」と語る。
友達のラケットを使ってみる、利き手と逆で打つ、ドライブマンがカットマンの真似をする。練習中の「遊び」も否定はしない。「ボールタッチが良くなる」「入れる能力が高くなる」と前向きな声かけで応える。少しでもいいプレーがあれば、「上手い!」「ナイスショット!」と、とことん褒める。
練習中は笑顔が多く、のびのびとした雰囲気だ。その一方で、試合で劣勢になった時に涙を流すほど負けん気が強い子もいる。なぜ、自由度の高い環境で競争心が育つのか。全国大会に出場したことがある小学6年生の男の子に聞くと、わかりやすく答えてくれた。
「自分たちはいつも王様ゲームで試合をしてるんだけど、一人が上手くなったら、みんなその子に『勝ちたい』と思う。勝ちたいから、強くなりたい。いつも勝ったり負けたりするけど、強い人も多いから、めっちゃ楽しいです」
子ども同士で打ち合う中でライバル心が生まれ、高め合う。プロや同世代の有力選手のプレーを収めた動画をYouTubeで見あさり、真似をして上手くなる子も多い。自然と自主性が養われ、必要だと思えば「ダブルスの大会が近いからダブルスやろう」などと、練習中に自分たちで試合方式を決めていくという。
放課後の「楽しい」を積み重ねる中で、子どもたちが自ら競技と向き合い、結果として「強さ」を発揮しているハッピー学童クラブ。その育成のかたちが示す肝の部分は、いかに子どもが主体的に夢中になれる環境を整えるかという点である。遊びや自由さを大切にする空気は学童ならではのものかもしれないが、その発想は、トップ選手の育成を掲げるクラブや学校の部活動などにとっても、示唆に富んでいるものだろう。
(長嶺 真輝 / Maki Nagamine)
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