もし、部活中に選手が大怪我をしたら… スポーツ事故訴訟で問われる「安全配慮義務」
今一度見直したい、適切な練習法・事故防止ガイドライン
いくつかの事案についてここまで見てきたが、事故をゼロにすることが難しいスポーツの現場で、万が一事故が起こっても信頼関係を維持し、意図しない争いを防ぐために指導者としてできることは何だろうか。訴訟に発展した場合に問われることになる「指導者の安全配慮義務が果たされていたのかどうか」。事故防止という観点からも、今一度各種団体が発行する練習マニュアル、安全のためのガイドラインを確認し備えておくのが肝要だ。
まずは、日本スポーツ協会と競技団体が連携し作成している指導手引きがある。スポーツ庁が2018年3月に発表した「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」に則り、適切で効率の良い練習・指導方法がまとめられている(名称に「中学校部活動」とあるが高等学校も原則適用と書かれている)。休養日設定や安全への配慮に関する項目もある。その一部を以下、ご紹介する。
スポーツ庁「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」
【日本サッカー協会】中学校部活動サッカー指導の手引き
【日本バスケットボール協会】中学校部活動におけるバスケットボール指導の手引き
【日本バレーボール協会】中学校部活動におけるバレーボール指導者へのガイドライン
【日本ソフトテニス連盟】ソフトテニス部活動指導の手引き
【日本ソフトボール協会】中学校部活動におけるソフトボール指導の手引き
【全日本軟式野球連盟】中学校部活動軟式野球指導の手引き
【日本陸上競技連盟】中学校部活動における陸上競技指導の手引き
【全日本柔道連盟】柔道の安全指導資料一覧
【全日本剣道連盟】中学校部活動における剣道指導の手引き
【日本相撲連盟】中学校部活動相撲指導の手引き
また、日本スポーツ振興センター(JSC)のホームページ「学校安全Web」では、スポーツ事故防止ハンドブック、スポーツ事故対応ハンドブックがそれぞれ公開されており、部活動などスポーツ指導現場で配慮すべき安全上の対策内容が充実している。JSCは学校管理下で発生する災害へ災害共済給付を行う独立行政法人であり、「学校事故事例検索データベース」ではこれまで給付を行ってきた総数7949件(平成17年度~令和元年度)の案件から死亡・障害事例が検索できる。競技種目などでの絞り込み検索も可能なので、自身が関係する競技で起こりうる事故をあらかじめ理解し対策しておくのに役立ちそうだ。