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日本人はなぜ失敗を恐れるのか 海外指導者も指摘、育成年代に蔓延する「勝利至上主義」の弊害

指導者に求められる失敗の種類の見極め

 そしてもう1つ、育成年代の指導で重要なのは、成功を手にするには失敗も必要だと子供たちに教えること。Jリーグで海外から来た外国人指導者が、日本人選手のプレーを見て「みんな失敗を恐れている」とよく言うが、それも日本特有の傾向だと僕は思う。子供の頃からさまざまな場面で、そういう教育を受けてきたから、日本人は失敗することを恐れる。

 しかし人生においても同じことが言えるが、失敗からこそ学べることは多い。どんなに偉大なピアニストでも、失敗せずに最初から完璧に演奏できる人など誰もいない。技術は失敗しながら身についていくもの。指導者に求められるのは、すべてのミスを咎めることではない。失敗の種類を見極め、子供に適切な声かけができるか、そして、仲間の失敗をカバーできるくらいの高い技術とメンタリティーを育てることだ。

 ピクシーがいつも言っているのは、その失敗はテクニカルミステイク(技術的なミス)なのか、それともタクティカルミステイク(戦術的なミス)なのか。前者に関しては、ミスが出ても仕方がないというか、そこは技術的な部分なので選手個々に練習して上手くなってもらうしかない。でも後者のミスについては判断の部分なので、「改善できる部分だから絶対になくしてくれ。集中しろ」と選手に強く言って改善を促している。

 失敗の種類を見極め、チャレンジするミスは奨励していく。日本人選手がミスを恐れすぎる根底には、育成期の指導者が「結果」を重視しすぎることにもあるように思う。もちろん時代は変わってきているし、素晴らしいビジョンを持った指導者が子供たちを教えているチームもあると思うが、こうした意識が日本各地に広がり、未来に目を向けて異なる“色”を持った個性的な選手を育てていってほしい。

(THE ANSWER編集部・谷沢 直也 / Naoya Tanizawa)

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喜熨斗 勝史

サッカーセルビア代表コーチ 
1964年10月6日生まれ。東京都出身。日本体育大学を卒業後、高校で教員を務めながら東京大学大学院総合文化研究科に入学。在学中からベルマーレ平塚(現・湘南ベルマーレ)ユースでフィジカルコーチを務めると、97年に教員を退職しトップチームのコーチとなる。その後セレッソ大阪、浦和レッズ、大宮アルディージャ、横浜FCを渡り歩き、04年からは三浦知良のパーソナルコーチを務める。08年に名古屋グランパスに加入してドラガン・ストイコビッチ監督の信頼を得ると、15年からは中国の広州富力、21年からはセルビア代表のコーチに招かれる。日本人としては初めて、欧州の代表チームのスタッフとして22年カタールW杯の舞台に立った。
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