スポーツ英才教育の是非 元Jリーガーが指摘する「保護者が陥りやすい」愛情の罠とは
「指導は、選手のために存在するもの」
サッカー少年や保護者を対象とした記事では、今でも「親は子に何をしてあげられるか」というテーマが人気だ。しかし、実際には、親の先導は、デメリットも大きい。久永氏は、自身の失敗を隠さず、保護者の人には知ってもらいたいと考えている。
「子どもに『すごく、できるようになる』なんて思うのは、親が勝手に思っているだけであって、子どもが実際にどう感じているのかは、別。私は、比較的早く気付くことができて良かったと思います。でも、仲の良い夫婦と食事をしているときに『コイツ(息子)をプロサッカー選手にしたいんですよ』と言った、あの場面を思い出すと、本当に恥ずかしい」
久永氏は、そう言って苦笑いを浮かべた。現役当時さながら、全力で挑戦し、全力で失敗し、全力でやり直す姿勢で指導に取り組んでいる印象だ。気付いたから、改めたから、今は自身の失敗も包み隠さず話すことができるということなのだろう。今は、指導者として、選手の本気を引き出すために何ができるのかを考えている。自分の指導するチームにいる次男については、ほかの子と同列に見る感覚になったという。
「指導は、選手のために存在するもの。選手がいなければ、指導も指導者も存在しない。選手がどうあるべきかを考える。それだけは間違ってはいけないといつも思っています」
小さい子どもほど、何も気にせず大きな目標を口にする。大人の愛情は、それならばと青写真を描いて力になろうとする。だが、多くの場合、実際の子どもの意識は日々、目覚ましく変わる。「プロになりたいと言ったから」と言質を取っても意味はない。大人の願いに沿わせようとしていないか、子どもの本気に寄り添えているか。愛情が強いために陥りやすい罠がある。子育ての方針は様々だが、スポーツ少年を一生懸命にサポートする保護者には、注意してもらいたい。
(平野 貴也 / Takaya Hirano)