Jリーグ注目の逸材が揃う埼玉の新鋭 柴崎岳の恩師は弱小校をどう変えたのか
「ピッチに入ったら闘争心の塊であれ」…下部組織では仕掛けの美学を重視
鹿島時代の柴崎を見れば合点がいくし、柴崎と青森山田中のチームメートで藤島監督を敬慕して08年に昌平にやって来たMF簗場拓人やMF日野口廉らは、まだ強豪とは言えないチームにあって技術と戦術眼の高さが目を引いたものだ。
11年9月に完成した人工芝のグラウンドはラグビー部との共有だが、狭いピッチで12対12のポゼッション練習をし、狙いであるボールロストの低下に当たる。
12年にはFC LAVIDA(ラビーダ)という中学生年代の下部組織を創設。昌平のコーチ陣が指導に当たり、昨年は埼玉県トップリーグと埼玉県ユース(U-15)選手の2冠を獲得した。仕掛けの美学を重視しているのが特長で、2期生で今季の10番を背負うMF渋屋航平は申し子のような選手だ。
部員は毎年150人前後。昌平にあこがれる中学生も増えた。独フランクフルト移籍合意が発表されたJ1鳥栖のMF鎌田大地の弟、MF大夢も今春入部してきた。元日本代表のFW玉田圭司と同僚だった千葉・習志野高校時代の藤島監督は名ボランチで、全国高校選手権の優秀選手としてベリンツォーナ国際ユース大会にも出場。「攻撃の前にまずは守備。1対1と球際の勝負にこだわり、ピッチに入ったら闘争心の塊であってほしい」と言う。
鹿島時代の柴崎が昨年12月のクラブワールドカップ決勝で、レアル・マドリードから2得点して世界を驚かせた。中学時代の恩師が指揮を執る昌平もまた、閉塞感のあった埼玉の高校サッカーに新風を吹かせ名門、古豪に刺激を与えている。
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河野 正●文 text by Tadashi Kawano