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大会乱立の高校サッカー 伊指導者が育成年代の酷使に警鐘「疲労溜め込むばかりでは…」

連日の過酷なトレーニングでは「心身の管理方法を学べない」

「まずイタリアには、ユース年代のトルネオ・ナツィオナーレ(全国選手権)はありません。またトップにプロを持つクラブと街のクラブが競う大会もありません。大会を開催するとしても、身体の負荷を考慮し、ジュニアユースなら20分ハーフ程度で1日2試合くらいまでに制限して行われます。その代わりに毎週末には必ずリーグ戦が行われます。さらに各カテゴリーで1日のトレーニング時間はもちろん、公式戦に限らずトレーニングマッチの回数も週に一度だけなどと規制されています」

 かつて高校の部活では、監督がマイクロバスのハンドルを握り遠征に出かけ、1日に何試合も行うのが当然のように美談として語られてきた。ところが欧州を筆頭にトレーニングの効率化が進む現在でも、JFAにこうした流れに歯止めをかける施策はない。

「特に将来プロを目指す選手たちなら、自分の身体についてよく知り、週末に向けて最大限のパフォーマンスを引き出す管理を覚えていく必要があります。食事も含めてリーグ戦へ向けて心身の準備を習慣づけていくのはとても大切なことなのですが、年に何度かの公式戦へ向けて連日たくさんのトレーニングを詰め込むのでは、疲労を溜め込むばかりで管理の方法を学ぶこともできません」

 ある強豪高校では、年頭に監督が「七冠奪取」の目標を掲げた。これほど狙うタイトルが目白押しでは、選手たちが疲弊するのは当然である。さらに言えば、シーズンオフの規定を先送りにしている日本のスポーツ界は、人道的にも看過できない問題を抱えていることになる。(文中敬称略)

(第4回へ続く)

[指導者プロフィール]
ルカ・モネーゼ

ACミランアカデミー千葉佐倉のテクニカル・ディレクター。1981年4月24日生まれ、ヴェローナ大学スポーツ運動科学部を卒業し、キエーボ、ヴェローナ、ミランなどセリエAの各クラブで指導に携わり、2012年に来日。ACミランスクール大分を経て現職に至る。大学では「スポーツ活動における指導方法論と、成長期の運動と身体の発育」を専攻し、フィジカル、アスレティック両トレーナー、及びUEFA(欧州連盟)B級ライセンスを保有。

[通訳]
長内秀樹

(加部 究 / Kiwamu Kabe)

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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