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「サッカーを深く考えてこなかった」と痛感 “選手主体”託された元主将の濃密な1年

「ホワイトボードには歴代キャプテンの顔写真が飾られていた【写真:加部究】
「ホワイトボードには歴代キャプテンの顔写真が飾られていた【写真:加部究】

社会に飛び出して実感「凄く恵まれた環境で部活ができた」

 思えば葛藤の連続だった。

「AチームやBチームのメンバーを決め、スタメンもベンチ入りも絞り込む。例えば、寝坊をした選手がいて、ベンチに入れるべきか、外すべきなのか。結果を優先するべきなのか、人間性なのか、毎回みんなで話し合いました。最初から凄く協力してくれる仲間もいれば、間違ったら指摘してくれる仲間もいた。でも最終的にはみんなが積極的に発言するようになっていました」

 一方で戸田は、充実した高校の部活を経験しただけに、駿河台大学へ進学後の典型的なトップダウン方式には歯がゆさを覚えた。

「ところが4年生になったら指導者がいなくなり、僕はキャプテンを任されました。それまで良かったことを残し、練習メニューや運営などは、高校時代の経験を活かして自分たちで考えて進めていくことができました」

 駿河台大学を卒業した戸田は、現在高校と大学、2つの母校でコーチを務めている。

「みんな高校を卒業して、それぞれが大学生や社会人に巣立ってから、改めて凄く恵まれた環境で部活ができたことを実感しています」

 戸田は、いつか自分がチームを持つ時が来たら、教えてもらったことに独自の味付けを施し、新しいボトムアップを実現しようと考えている。(文中敬称略)

(第3回に続く)

(加部 究 / Kiwamu Kabe)

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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