サッカーの「本当の基本」とは　日本人元プロ選手がブラジルで得た「奪われない感覚」

2018.03.09
著者 : 加部究

日本の育成で置き去りにされた「個を伸ばす」ための大前提

　日本サッカー界でも「個を伸ばす」必要性は常に強調され続けてきた。しかし実は、そのための大前提が置き去りにされてきた可能性がある。

「個を伸ばすには、やはり育成年代が最も大切です。しかし日本の育成状況を見ると、両極端に分かれている。奇抜なドリブルやフェイントばかりを覚えて楽しむケース。もう一方は指導者が勝つために、自分のサッカーを押しつけるケースです。でも育成年代で身に着けておかなければならないのは、本当の意味での基本です。

　では本当の基本とはなんなのか。結局ボールを奪われなければ、世界中どこへ行ってもプレーできます。奪われないためにワンタッチがあり、その感覚をリフティングで養う。実は楽しいサッカーと、プロを目指すサッカーは、一緒じゃなければいけないと思うんですよね」

　檜垣が投じる一石は、実は育成指導の転換を示唆するほど重要な意味を持つのかもしれない。（文中敬称略）

（加部究 / Kiwamu Kabe）

加部究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』（竹書房）を上梓。『日本サッカー戦記～青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』（いずれもカンゼン）、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』（ともに双葉社）、『祝祭』（小学館文庫）など著書多数。