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指導者に何が求められるのか 「チームのために戦える場所」を与える義務と責任

子供はみんな試合に出たい。監督もみんなを試合に出したい。

【連載コラム】ドイツ在住日本人コーチの「サッカーと子育て論」――試合に出たい子供を起用するには

 子供はみんな試合に出たい。監督もみんなを試合に出したい。

 でも、試合となると誰だって勝ちたくなるし、試合にのめり込んでいろんなことを考えているうちに、選手交代のタイミングを見誤ったり、何人かの選手を出場させられないこともある。先日、U-10チームの試合で最後まで出場できなかった子供が2人いたという。普段は心優しく、ちゃんとみんなを起用する監督だが、その日はチームの出来があまり良くなかったこともあり、どこか他のことに気を奪われてしまったのだろうか。

 楽しみにしていた試合に出られなかった悲しみは大きい。1人は他の用事をキャンセルしてこの試合に駆けつけていたと、お父さんが話していた。

 後日、自分のミスを認めた監督は、自身の起用法をチームの前で子供たちに謝った。子供たちにもその想いはしっかりと伝わった。

 1週間後の次のリーグ戦、チームは相手に3点リードを許すという展開だったが、監督は全選手をしっかりと起用した。誰も諦めなかった。みんなが精一杯のプレーをしようと走った。思いが一つになった時のチームは強い。後半猛攻を見せたチームは、6-5の逆転勝利を飾った。

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中野 吉之伴

1977年生まれ。ドイツサッカー連盟公認A級ライセンスを保持する現役育成指導者。ドイツでの指導歴は20年以上。SCフライブルクU-15チームで研鑽を積み、現在は元ブンデスリーガクラブであるフライブルガーFCのU12監督と地元町クラブのSVホッホドルフU19監督を兼任する。執筆では現場での経験を生かした論理的分析が得意で、特に育成・グラスルーツサッカーのスペシャリスト。著書に『サッカー年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)、『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)がある。WEBマガジン「フッスバルラボ」主筆・運営。

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