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子供の「楽しい」は鵜呑みにできない ドイツの育成現場で繰り返される試行錯誤

今季から小学1年生の次男はFユーゲント(U-8)。ドイツでは生まれ年でチーム分けが行われるので、小学1年生と2年生が一緒になる。最初の練習時にコーチが子供たちにこんなことを言っていた。

【連載コラム】ドイツ在住日本人コーチの「サッカーと子育て論」——“団子サッカー”にさせないための環境整備

 今季から小学1年生の次男はFユーゲント(U-8)。ドイツでは生まれ年でチーム分けが行われるので、小学1年生と2年生が一緒になる。最初の練習時にコーチが子供たちにこんなことを言っていた。

「今日からみんなはFユーゲントだ。これまでのサッカーからちょっと成長して、次のステージに進めるように頑張ろう」

 サッカーはポジショニングスポーツとも言える。それぞれがバラバラな動きをするのではなく、フィールド上にある約束事を少しずつ身につけていくことが大切だ。

 ミニゲームが始まるとコーチは「そんなにごちゃごちゃしてたら、ボールもらえないよ。広がってごらんよ」としきりに声をかけるが、子供たちはまだピンとこない。子供的には広がってと言われたから広がってみた。でも外から見た、その動きは1メートル後ろに下がったくらい。コーチが頭を抱える。

 でもそれが当たり前なのだ。「広がる」という言葉が自分がすべき動きとリンクしていないし、リンクしたところで、広がることで自分がサッカーに関われている、サッカーが上手くなっているという実感がまだ乏しい。「何のために?」が納得できないと、勢い良くサッカーはできない。

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中野 吉之伴

1977年生まれ。ドイツサッカー連盟公認A級ライセンスを保持する現役育成指導者。ドイツでの指導歴は20年以上。SCフライブルクU-15チームで研鑽を積み、現在は元ブンデスリーガクラブであるフライブルガーFCのU12監督と地元町クラブのSVホッホドルフU19監督を兼任する。執筆では現場での経験を生かした論理的分析が得意で、特に育成・グラスルーツサッカーのスペシャリスト。著書に『サッカー年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)、『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)がある。WEBマガジン「フッスバルラボ」主筆・運営。

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