学校統合→4か月後の全国1勝 体育館使用不可の逆境も…岩手の“新たな名門”が示した成長の跡

逆境も乗り越え成長「ここから南昌みらいの歴史を作っていく」
盛岡南でキャプテンを務めていた佐藤日向も、急に部員が増えた中で、コミュニケーションを重視したと話す。
「練習量が増えたり、きつい練習もあったりしましたし、僕自身も部員数がすごく増えて、試合に出られるか、メンバーに入れるのか、最初は不安もありました。でも、43人全員でまとまって乗り越えられたらすごくうれしいと思ったし、不来方の3年生が盛岡南の後輩たちに優しく教えてくれて、先生にも支えられて、ここまで来ることができました」
さらに、逆境もチームの武器に変えた。学校統合の関係で体育館の改修工事をすることになり、冬の間、4か月ほど体育館を使用できなくなったのだ。ハンドボールコートが使えず、外のグラウンドでフォーメーションの練習ばかりしていたという。安倍監督は「それをプラスに変えて、組織プレーが強くなったところはあるかもしれません」と胸を張る。
南昌みらいは、激しいディフェンスからの速攻だけでなく、セットオフェンスの多彩さも大きな武器だ。とりわけ、18-10の8点リードで迎えた後半開始早々に久慈が決めた先制点につながる、流れるようなセットオフェンスは印象的だった。
久慈もセットオフェンスには自信を持っていると力を込める。「セットオフェンスは冬の間に、他のチームのビデオを材料にして自分たちで考えました。それが試合で結構刺さっている手応えがあります。これまでも初見では止められていないので、『今回もいけるんじゃない?』とやってみました」。
翌日の3回戦では、開催地の岡山県立総社高校と対戦。高さとパワーのある相手に苦戦し、前半を6点のビハインドで終える。後半途中から7人攻撃を仕掛けて3点差まで迫ったが、逆転できず。24-35で敗れ、初めての夏は幕を閉じた。
それでも安倍監督は、この夏の選手の成長を讃えた。
「この代は、努力するということに長けている人が多かったですね。うちはインターハイの県予選以外は全部負けているチーム。新人戦、選抜大会の県予選、夏の東北大会も1回戦で敗れています。インターハイ予選の前に、みんなで組織プレーの確認をして、みんなで努力をして、初めて県内で優勝することができました。本当に成長したなと思います。
全国大会に出られること自体がうれしいことで、そこでまさか1勝できて、力のある総社高校さんとも戦えた。ここから南昌みらいの歴史を作っていくという中で、本当にいいインターハイでした」
選手が身に着けるウォーミングアップTシャツの背中には「FOR THE FUTURE」と書かれている。この言葉に込めた想いを、43人は確かにコートで示してみせた。
(山田 智子 / Tomoko Yamada)
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