【陸上】ライバルで投てきアベックV 市岐阜商の高校スター2人を強くする“いい悔しさ”
抜きつ抜かれつで記録を伸ばしてきた2人
2人は高校1年の頃から、抜きつ抜かれつしながら、各大会の大会記録を次々と塗り替え、記録を伸ばしてきた。
1年生のインターハイは稲福が出場して11位に(予選で15メートル71)。2016年10月の日本ユース選手権の砲丸投げでは、山下が優勝(16メートル65)、稲福が準優勝(16メートル51)のワンツーフィニッシュを果たし、一躍注目を集める存在となった。
昨年は、一般男子より約2キロ軽い5キロの砲丸投げで、4月に山下が18メートル45のU18日本新記録(当時)を樹立すると、翌月には稲福が19メートルを叩き出して塗り替える。しかしインターハイの砲丸投げでは、稲福は優勝者にわずか2センチ及ばず2位、山下は円盤投げでは予選落ち、砲丸投げは8位に終わり、ともに悔しさの残る大会となった。
今年に入ってからも2人の記録ラッシュは止まらない。5月の高校総体東海予選会では、砲丸投げで稲福が東海高校新記録(17メートル65)で優勝、円盤投げでは山下が東海高校新記録(54メートル65)で優勝を飾る。6月の地元岐阜で開催されたアジアジュニア選手権にも揃って出場し、山下は円盤投げで銅メダル(56メートル51)を獲得。稲福も自己初の18メートル台で5位入賞(18メートル10)を果たした。
「インターハイでリベンジしたいという気持ちがあった。“いい悔しさ”がメンタルの強化に繋がった。円盤投げ、砲丸投げの両方でワンツーを狙おうと話していた」と最高学年になった山下は満を持して今大会に臨んだ。
午前中に行われた予選で56メートル95を投げて高校記録を更新して決勝進出を決めた山下に対し、稲福は力を発揮できず予選で敗退した。決勝に臨む山下に、稻福は観客席の最前列に設けられたコーチ席から身を乗り出して声をかけ続けた。
5投目でさらに記録を伸ばし、迎えた6投目、スタンドから「ラスト、行ったれ?」と稲福は大声で叫んだ。その声に後押しされるように、山下の投げた円盤は大きな弧を描き、60メートルラインの少し手前に落ちる。58メートル02の高校新記録が表示されると会場がどよめいた。