全員初心者からの全国挑戦 なぜ“高校生なぎなた女子”はなぎなたに青春を捧げるのか
団体戦の目標は8強進出、急成長エースの存在がカギ握る
団体、そして個人で2選手が出場するインターハイ。団体戦での目標は入賞(8強以上)に置いている。入学から最も成長した選手として期待をかけているのが、長清だ。京都府予選の個人戦でも優勝し、団体、個人の2種目で全国の舞台に挑む。谷口監督はその成長ぶりをこう評する。
「入部当初は目立つ方ではなかったし、彼女自身も必死でなぎなたをやるつもりではなかったと思う。勉強が中心だったと思います。でも2年生の途中くらいから、急になぎなたが面白くなったんでしょうね。見違えるほど意欲的になって、今は部員の中でも1番気持ちの強さももっている。あの子が負けたら仕方ないかなと思います」
長清自身はターニングポイントをこう振り返る。
「2年生の終わりくらいまで、全然うまくいってなくて、辞めようかなという時もありました。でも3年生が引退しての初めての大会、(昨秋の)近畿大会の予選で優勝した時はびっくりして、今まで自分が意識してやってきたことがうまくいったと。そこから自信がつきました。努力を惜しまない先輩方がたくさんいて、その姿を見て自分が思っている辞めたいという気持ちはしょうもなくて、そんなん言ってられへんなと思いました。やり続けたら楽しいこともいっぱいあります」
競技キャリアが短い故か、些細なことをきっかけに急成長することは、ままあるのだという。もう一人個人戦に出場するのは、主将の中川原だ。こちらは戦前の予想を覆す快進撃。これまでは個人戦ではトーナメントの序盤での敗退がほとんどだったというが、最後の夏は決勝まで勝ち上がった。長清には敗れたが、堂々の準優勝。上位2人だけに与えられる個人戦の出場権を、南陽高勢で独占した。
「今までたくさん悔しい思いをしてきた。だからこそ頑張れたというのはある。勝ちたい思いが強かったですが、正直勝てると考えてなかった。インターハイでも、やるからには勝ち上がりたい。目標はまずは予選突破です」
個人戦では2回戦以降、同じ南陽高のチームメートと、決勝の長清を含めて4人連続で対戦。「よく知っているので、やりづらさはある」というが、だからこそ見える弱点もある。巧みな攻めを見せ、見事にインターハイ切符をつかんで見せた。
事前の評判通りにはいかないのも、なぎなたの特徴の一つでもある。唯一の経験者で、2年生でメンバー入りしている藤本彩乃はこう力を込めた。
「不安はすごくありますが、自分のできることを発揮して試合ができたらいいなと思います。どんなことが起こるかわからないけど、先輩の思いも背負っている部分もあるので、団体ではチームとして勝っていくこともありますが、自分も勝利に貢献できるように1勝してくることが目標です」
ほとんどの選手が初めて挑む全国の舞台。未経験から努力でつかんだ場所で、“普通の高校生”たちが起こす、真夏のドラマがまもなくスタートする。
◇インターハイのなぎなたは8月5日に開幕し、3日間にわたって熱戦が繰り広げられる。今大会は全国高体連公式インターハイ応援サイト「インハイTV」を展開。インターハイ全30競技の熱戦を無料で配信中。また、映像は試合終了後でもさかのぼって視聴でき、熱戦を振り返ることができる。
(THE ANSWER編集部)