亡き恩師がベンチで「見守ってくれている」 高校バスケの“絶対女王”桜花学園、名将への思いを背負った教え子の涙

“特別な場所”岡山で刻んだ、桜花学園の新たな歴史
優勝を告げるブザーが鳴った瞬間、白コーチの目からは涙が溢れ、あわててポケットからハンカチを取り出して目を覆った。その姿を見て、もらい泣きする観客や報道陣もいた。白コーチが背負っているものの大きさを、誰もが理解していたからだろう。
「私の中で、今年度のインターハイは絶対に譲れないという思いがありました」(白コーチ)
実は、今回インターハイの開催地である岡山は、39年前に井上氏が初めてインターハイ優勝を飾った特別な場所。生前、再び岡山でインターハイを戦うことを楽しみにしていたという。
「先生とお別れして初めてのインターハイで、桜花学園の存在感を見せたいという思い、見せつけなければという義務感がありました」。白コーチは目に涙を溜めて、そう語った。
記者から「井上先生はなんと言ってくれると思いますか?」と問われると、白コーチは「『お前、肩の力抜け』とかじゃないですかね。『肩の力入りすぎだ』みたいな」と笑った。
毎試合後、ミックスゾーンに現れる白コーチは、試合をしてきたかのように汗びっしょりだった。というのも、試合中は常にコートサイドに立ち、選手たちに「ディフェンスだよ」「いいよ、いいよ」と声をかけ続け、ワンプレーごとに大きく手を叩き、よいプレーが出ると力強くガッツポーズをし、とコートにいる選手とともに戦い続けていたからだ。いつからか、選手・スタッフに無料配布されているポカリスエットを1杯飲んでから取材に応えるのがお約束になった。
「部員たちが本当に命懸けで、もがきながらも一生懸命やってくれるので、なんとか自分にできることを120%出して、勝利を届けたいなと思っていました」
この舞台に立つ誰もが、全力を尽くしている。それでも、亡き恩師の「高校一番」の思いを背負い、100%以上の力で戦い続けた桜花学園の選手・コーチたちに、ほんの少しだけ空の上の先生が力を貸したのかもしれない。
新たな桜花学園の歴史が、再び岡山の地から始まった。
(山田 智子 / Tomoko Yamada)
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