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必需品は龍角散…宇都宮工の爆声1年生が「特別な存在」になったワケ 誰よりも先に決まった背番号20

第77回秋季関東高校野球大会は26日、横浜市のサーティーフォー保土ヶ谷で1回戦2試合を行い、2004年以来20年ぶりの出場を果たした宇都宮工(栃木)は2-4で浦和実業(埼玉)に敗れ初戦で姿を消した。序盤に3点を先制されながら、終盤まで粘りを見せたチームでひと際目立ったのが、背番号20の金子真翔(1年)だ。この秋からベンチ入りし、まだ公式戦の出場はない選手だが、チームの誰もが「特別な存在」だと口にする。その理由とは。

バッテリーにひと息入れさせた後、叫びながら猛ダッシュでベンチへ戻る金子真翔【写真:中戸川知世】
バッテリーにひと息入れさせた後、叫びながら猛ダッシュでベンチへ戻る金子真翔【写真:中戸川知世】

伝令の金子真翔へ飛ぶ声援…語った声出しの「目的」とは

 第77回秋季関東高校野球大会は26日、横浜市のサーティーフォー保土ヶ谷で1回戦2試合を行い、2004年以来20年ぶりの出場を果たした宇都宮工(栃木)は2-4で浦和実業(埼玉)に敗れ初戦で姿を消した。序盤に3点を先制されながら、終盤まで粘りを見せたチームでひと際目立ったのが、背番号20の金子真翔(1年)だ。この秋からベンチ入りし、まだ公式戦の出場はない選手だが、チームの誰もが「特別な存在」だと口にする。その理由とは。

 ピンチに背番号20がグラウンドに飛び出すたびに、スタンドの宇都宮工応援団から「いいぞ、いいぞ金子」と異例のコールが上がった。伝令を託された金子は声援を背にマウンドへ猛ダッシュし、バッテリーにひと息入れさせると、再び猛ダッシュでベンチへ戻る。チーム全体で戦い、栃木県大会で準優勝を果たした宇都宮工を象徴する存在なのだ。

 スタンドの応援団からは「金子はチームの士気を上げてくれる、特別な存在なんです」との声まで聞かれる。攻撃中は三塁コーチャーズボックスに立ち、よく通る声でナインを鼓舞。試合後の声はガラガラだ。試合前と、5回の整備時には龍角散ののど飴が欠かせない。その声もただ大きいだけでなく、ポリシーは明確だ。なぜ野球では声を出すべきなのかという理由が詰まっている。

「声が止まる時間があると、沈黙の時間になって流れが相手に行くこともある。そこでいかに内容のある声を出せるかだと思っています。ただ『ナイスボール』とかじゃなく『タイミングが合ってない』とか、質のいい声を出したいなと思っているんです」

 宇都宮市内の中学校で軟式野球をプレーしていた昨年は「4番・一塁」が定位置。ただ当時から、声でもチームに貢献できると気づいていた。宇都宮工には「公立でどこまでできるのか、試してみたくて」と入学。1年生が最初から大きな声を出すことには勇気もいりそうなものだが、先輩たちは受け入れ、チームに不可欠な存在と認められていった。秋の大会前、背番号をもらえるのかドキドキしている本人をよそに、ベンチ入りは“既成事実”となっていた。

ピンチでナインに一声かける金子。大森監督は「20番は重要な背番号」と口にする【写真:中戸川知世】
ピンチでナインに一声かける金子。大森監督は「20番は重要な背番号」と口にする【写真:中戸川知世】

 高校野球の指導歴が30年になる大森一之監督は「私にとって、20番は重要な背番号なんです」と口にする。決して“ベンチ入りギリギリ”の数字ではなく、最初に選んでいるほどだ。「一生懸命だったり、特徴のある子を歴代選んでいるんです」という基準に、金子はピッタリだった。

 宇都宮工は1959年夏の甲子園で準優勝したのをはじめ、夏4回、春5回の出場歴がある古豪。金子はこの日の敗戦を「自分の声では変えられない重さがあった。点を取られると少し暗くなるところがあった」と振り返るが、その声と元気でチームを変えつつある。春までの目標は「声出しはもちろん自分の武器なんですが、ヒット1本打ってから塁上のポーズでチームを乗せる選手を目指したい」。今度は打席や塁上で、試合の流れを読み切った声が響き渡るか。

(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)

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