「5回までは両校を…」球場包む異例の大合唱 5戦目で成功…立花学園が示したスポーツマンシップ
第106回全国高校野球選手権の神奈川大会は18日、川崎市の等々力球場などで5回戦を行い、立花学園は春の県大会で優勝した武相に0-6で敗れ、16強で姿を消した。春季県大会の再戦となった両校。5回には両チームの応援席が合唱曲の「虹」を大熱唱し、球場を一つにした。異例の光景の裏に、何があったのか。高校球児が示した“スポーツマンシップ”の形に、スタンドからは歓声が上がった。
第106回全国高校野球選手権・神奈川大会
第106回全国高校野球選手権の神奈川大会は18日、川崎市の等々力球場などで5回戦を行い、立花学園は春の県大会で優勝した武相に0-6で敗れ、16強で姿を消した。春季県大会の再戦となった両校。5回には両チームの応援席が合唱曲の「虹」を大熱唱し、球場を一つにした。異例の光景の裏に、何があったのか。高校球児が示した“スポーツマンシップ”の形に、スタンドからは歓声が上がった。
真夏の太陽の下で、球児と応援団の歌声が球場を包み込んだ。5回を終え、選手の体調管理のために設けられた10分間のクーリングタイム。立花学園の応援席が左右に揺れながら、合唱曲の「虹」を歌うと、武相の応援席からも呼応するかのように歌声が響き始めた。敵味方関係なく声を合わせる異例の光景。一体何が起こったのか。
「この歌を歌うことには『5回まではノーサイドで両校を称えよう』という意味が込められている」
立花学園のスタンドで応援団長を務める稲木王雅(おうが・3年)はそう説明した。
この夏から取り入れたという「虹」の大熱唱。今大会の開幕前、志賀正啓監督に提案されたのがきっかけだった。曲目は「誰もが知っている歌」として志賀監督が決めたという。ベンチ外となった部員は、メンバーがグラウンドで最後の調整をする中、隣にある練習場で本番さながらの熱唱。こちらも大会に向けて準備を進めてきた。
ただ、この試みを成功させるにはもう一つ必要なものがあった。対戦校の協力だ。立花学園にとってこの日は5戦目。毎試合、開始前に相手校の応援団長へ「できれば一緒に歌いましょう」と呼びかけてきたが、なかなか“共演”は果たせなかった。一緒に歌ってくれたのは武相が初めてだった。
両校は春季県大会の3回戦で対戦。2-8で敗れた立花学園は「打倒・武相」を掲げてきた。ただチームの中心、主将の小長谷琉偉内野手(こながや・るい=3年)が、横浜商との3回戦で左手の骨を2本折る大けがに見舞われ、出場できず。チームを引っ張ってきた主将の思いを、皆が背負って挑んだ大一番だった。
「虹」の大熱唱が起きたのは、打者8人の猛攻で4点を失った直後。グラウンドや応援では火花を散らす両校がひとつになった空間に「球場が一体となることを体現できたのは嬉しい」と稲木は口にした。試合は相手なくして成り立たない。そこで敬意を持って戦うのがスポーツマンシップだ。高校球児が体現する姿は、勝負を見届けた人たちの心に深く刻まれた。
(THE ANSWER編集部・山野邊 佳穂 / Kaho Yamanobe)