「これが私学か」圧倒された夏から1年 県立唯一の神奈川16強、市ケ尾ナインが負けても感じた“成長”
「クリスマスイブを休みにしてほしい」という珍要求に…
新チームは昨夏を超える「5回戦勝利」を目標に掲げ始動した。3泊4日で行った夏合宿では、菅澤監督からボールの手入れ不足を指摘され、初日からボールを使わせてもらえない波乱のスタートだった。秋の大会では横浜創学館に0-10で大敗し、実力不足を痛感した。
一方で「クリスマスイブを休みにしてほしい」と菅澤監督に頼んだこともある。その代わりに始まったのが「タイヤサーキット」。タイヤ押し30メートルと、ジャンプ系の運動を30秒。2.5往復を1セットとし、課されたノルマをクリアした。チームで何かあるごとにミーティングを開いて話し合い、目標を再確認して突き進んできた。
当たり前のことを当たり前にこなす大切さを知り、粘り強さを身につけて挑んだ最後の夏。初戦から平塚学園を6-3で下し、4回戦では第3シードの三浦学苑に7-4で逆転勝ち。私学への“おそれ”はもう、どこにもなかった。「自分たちには巻き返す力があるという自信があった。自分たちを信じていたから、落ち着いてプレーできた」と杉山は胸を張る。
慶応に敗れた昨夏、杉山は「これが私学か」という感想を抱いたという。それから1年。心も体も、そしてチームも成長させ、私立相手に堂々たる戦いぶりだった。「今年は本気で戦えると実感できた。本気で『楽しかった』と思える高校野球でした」。強豪私学が覇を競う神奈川で、最後まで生き残った県立校。昨年とゴール地点は同じだったが、壁をひとつ突破したのは間違いない。この日見せた雄姿は、後輩たちへ受け継がれていく。
(THE ANSWER編集部・山野邊 佳穂 / Kaho Yamanobe)