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部員たった1人で始めた高校野球 横浜旭陵・大川烈央が最後まで忘れなかった9校連合の“知恵”

第106回全国高校野球選手権の神奈川大会が7日、大和市の大和スタジアムなどで開幕。横浜緑園と横浜旭陵の連合チームは海老名に5-15のコールド負けを喫し、姿を消した。悔しさの中にも、3年間やり遂げたというすがすがしい表情を見せていたのが、エースの大川烈央投手(横浜旭陵3年)だ。3年前の春、部員が1人なのをわかった上で野球部に入部。最後の試合では、数々の学校と連合チームを組んできた知恵を生かせたという。

大川は、横浜緑園との連合チームを勝たせようと必死の努力を続けてきた【写真:羽鳥慶太】
大川は、横浜緑園との連合チームを勝たせようと必死の努力を続けてきた【写真:羽鳥慶太】

第106回全国高校野球選手権・神奈川大会

 第106回全国高校野球選手権の神奈川大会が7日、大和市の大和スタジアムなどで開幕。横浜緑園と横浜旭陵の連合チームは海老名に5-15のコールド負けを喫し、姿を消した。悔しさの中にも、3年間やり遂げたというすがすがしい表情を見せていたのが、エースの大川烈央投手(横浜旭陵3年)だ。3年前の春、部員が1人なのをわかった上で野球部に入部。最後の試合では、数々の学校と連合チームを組んできた知恵を生かせたという。

「3年間の最後だったので、絶対に打ち取ってやろうと思って」

 先発し1回1/3で降板した大川は、3-15とコールド負けが迫る5回無死三塁で再びマウンドに立った。打席に立つのは海老名の「4番・左翼」の角谷楓太外野手。初球を左前に運ばれると、「5番・二塁」の佐久間智也内野手にも左越え二塁打とたたみかけられ、敗退が決まった。

 どんなに点差をつけられても、あきらめるわけにはいかなかった。「今までの、たくさんの連合さんの思いもあるので」と大川は言う。1年生の1年間は、横浜旭陵でたった1人の野球部員。3年間、一度も自校で9人そろえることはできなかった。「ただ単に、野球が大好きなので」と入部したものの、連合チームでそろっての練習は週末に限られる。平日は学校で、監督と2人きりのキャッチボールやティー打撃が日課だった。

 2年生になると下級生が2人入部してきたものの、連合からの脱出は叶わない。1年秋から2年春にかけては、実に9校が集まった連合チームでも戦った。週末の練習には車で1時間かけて送ってもらった。電車で通う仲間には交通費が月1万円かかるという話も聞いた。部員をなんとか集め、連合から抜けていく学校をうらやましいと思ったこともある。それでも連合チームの良さがあると信じて疑わない。

 連合チームで勝つには、とにかく仲の良さだと信じてチームを作ってきた。マウンドでも、この試合途中で回った中堅の守備でも、よく通る爆声で仲間の守備位置を調整していた。「9校連合の時の中堅手だった、藤沢総合の北龍之介(3年)がそうだったんです。僕はその時右翼だったんですけど、連合が変わってもこれは続けようと思って」。様々なチームの知恵が持ち込まれる連合チーム。いい部分を生かそうと必死だった。

 最後の年は、さらに自校の部員が5人増えた。後輩たちには「僕たちは夏、1回も勝っていないので」と夏1勝の夢を託す。横浜旭陵は2027年4月から横浜旭との統合が決まっており、今春の入学者が最後の後輩。もう増えることはない。「大学でも絶対に野球を続けます。大好きなので」という大川が、連合の知恵も注入して作った伝統が、次はきっと花を咲かせる。

(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)

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