高校生100人以上が運営に参加 「みのおスマイルフェス」で届ける地域への感謝と笑顔【#青春のアザーカット】
学校のこと、将来のこと、恋愛のこと……ただでさえ悩みが多い学生の毎日。青春時代はあっという間に過ぎてしまうのに、コロナ禍を経験した世の中はどこか慎重で、思い切って全力まで振り切れない何かがある。
連載「#青春のアザーカット」カメラマン・南しずかが写真で切り取る学生たちの日常
学校のこと、将来のこと、恋愛のこと……ただでさえ悩みが多い学生の毎日。青春時代はあっという間に過ぎてしまうのに、コロナ禍を経験した世の中はどこか慎重で、思い切って全力まで振り切れない何かがある。
便利だけどなぜか実感の沸かないオンライン。マスクを外したら誰だか分からない新しい友人たち。そんな密度の薄い時間を過ごした後、やっぱりリアルは楽しいと気付かせてくれたのは、スポーツや音楽・芸術・勉強など、自分の好きなことに熱中する時間だったりする。
「今」に一生懸命取り組む学生たちの姿を、スポーツ・芸術など幅広い分野で活躍するプロカメラマン・南しずかが切り取る連載「#青春(アオハル)のアザーカット」。何よりも大切なものは、地道に練習や準備を重ねた、いつもと変わらない毎日。何気ない日常の1頁(ページ)をフィルムに焼き付けます。(取材・文=THE ANSWER編集部・佐藤 直子)
25頁目 箕面自由学園高等学校・みのおスマイルフェス実行委員 吉福春香さん、池田桃花さん、上松葵さん、栗山晴菜さん、疋田萌夏さん
街角でふと見かけた笑顔で、1日がパッと明るく照らされることがある。誰だってしかめっ面や仏頂面より、笑顔に触れた方が心地良い。なにより笑顔は連鎖するものだ。
だが、2020年春、新型コロナウイルスが瞬く間に世界を覆い尽くした時、私たちは得体の知れない不安に襲われ、日常から笑顔は消えてしまった。ワクチンが開発されても、みんなの顔は大きなマスクで覆われたまま。ほんの少し前までカラフルに彩られていた毎日は、いくつか色を失ってしまったようにも見えた。
「コロナ禍で傷ついた地域に笑顔を届けよう」
そんな想いを持って、2021年、箕面自由学園高等学校に立ち上がった課外活動が「スマイルギフトプロジェクト」だ。
「もっと効率良く進められた」の思いに背中を押され、実行委員に立候補
「スマイルギフトプロジェクト」の主な活動は、複合型ショッピングセンター「みのおキューズモール」と協力し、毎年11月3日に地域交流イベント「みのおスマイルフェス」を開催すること。1、2年生の希望者が参加し、イベントの企画立案から当日の運営までを手掛けていく。
3回目を迎える今年は、1、2年生あわせて100人以上が参加。プロジェクトを担当する野畑希和子先生にアドバイスを仰ぎながら、活動の舵を取るのが2年生の実行委員、吉福さん、池田さん、上松さん、栗山さん、疋田さんの5人だ。5人はそれぞれ、実行委員に立候補した。
栗山さんを除く4人は、昨年も「スマイルギフトプロジェクト」に参加した。吉福さんと池田さん、上松さんは同じ綿あめブースを担当。「予想以上にお客さんが来てくれたことに自分たちが混乱してしまい、綿あめ一つに30分待ちとかさせてしまって、もっと効率良く進められたなって思いました」と吉福さん。上松さんも「綿あめを作れる人と作れない人の差があったり、お金の計算ミスがあったり。もう少し長く練習期間を取りたかったなって思いました」。スムーズなオペレーションをできなかった反省と次々と見つかる改善点が、今年の参加を後押しした。
昨年参加したプログラムに物足りなさを感じていた栗山さんは、「スマイルギフトプロジェクト」で活動する友達の充実ぶりに興味を惹かれた。「生徒だけで会社を作るっていうプロジェクトに参加したんですけど、あまり企業やお店とのコラボがなくて、スマイルギフトプロジェクトの方が楽しそうだなって思いました」と“移籍”。実行委員として積極的に関わることにした。
10回以上重ねたミーティング、実施会場や協力企業に5人でプレゼン
実行委員の5人は「存在は知っていたけど、顔見知り程度でした」という。それでも「イベントをもっといいものにしたい」と想いを共有する者同士。まだ1年生だった今年1月から10回以上ミーティングを重ねるうちに、今では強い絆が芽生え、ニコイチならぬ「ゴコイチみたいな感じ」と大笑いする。
ミーティングでは前年の反省を踏まえながら、改善できる点や不安な点について徹底的に話し合った。わずか5人の実行委員で、100人の参加者をまとめるにはどうしたらいいのだろう??。実行委員長を務める吉福さんは「去年はイベントの目的や目標が明確になっていなかったので、今年は最初にバンッ!て目標を出すことで、みんなの意識を統一することにしました」と話す。
何度も何度も話し合った結果、今年の目標は「地域との交流を深める」と決定。テーマは、地域の親子が一緒に楽しめる空間にしようと「遊園地」にした。そして、3つの目玉には「地域のお店の出店」「みんなが楽しめるスポーツ」「国際交流」を定めた。
もう一つ、今年全面に打ち出したのが「箕面自由学園らしさを出す」ということ。昨年は先生にリードされる場面が多かったことを踏まえ、今年は完全に生徒主体の進行に切り替えた。まずは実行委員5人が奮起して資料を作成し、会場となるみのおキューズモール、実施協力をする広告代理店に対して、イベントのプレゼンテーションを実施。上島一彦・箕面市長を訪問し、今年の実施計画の発表もした。野畑先生は「本当に5人が頑張ってくれました」と目を細める。
「飲食」「物産」「スポーツ」「国際ステージ」で表現する地元・箕面とのつながり
参加する生徒たちは「飲食」「物産」「スポーツ」「国際ステージ」の担当に分かれ、先頭に立つ5人に続けとばかりに、毎週金曜日、午後3時半から始まる活動時間になると、積極的に準備を進めてきた。時間が経つのはあっという間。本番はもう、そこまで迫っている。
池田さんと栗山さんが率いる「飲食」では、箕面の名店とコラボしてオリジナル商品を開発した。「フェルディナンドというパン屋さんとコラボバーガーを販売します。どんなバーガーにするかは決まったので、あとは飾り付け。お客さんに少しでも楽しんでもらう工夫を考えています」と池田さん。ドリンク担当の栗山さんは「箕面駅近くにあるカフェ、C&Rさんとコラボして、箕面の特産でもある柚子を使ったドリンクを作りました。柚子の味をぜひ広めたいと思って」と声を弾ませる。
疋田さんが担当する「物産」では、箕面市に本社を置く洋菓子店・デリチュースとコラボ。「デリチュースさんで人気のフィナンシェと一緒に、自分たちで材料や形を考えて作ったオリジナルフィナンシェを販売する予定です」という。材料費などを引いた最終的な売上げは箕面市に寄付することになっている。
上松さんが担当する「スポーツ」では、バレーボールを使ったストラックアウトのようなゲームを考案した。親と子による対戦形式を想定しているため、「子ども用に踏み台を用意して、身長差などをカバーするようにしています」と楽しく拮抗したゲームになるよう工夫を考えた。
「国際ステージ」と担当するのは吉福さんだ。大阪大外国語学部がある箕面は、国際色豊かな街でもある。「7か国の民族衣装を来たランウェイをしたり、箕面の姉妹都市があるニュージーランドとメキシコのおもちゃを使ったゲーム体験をしたり、大人にも子どもにも色々な国に興味を持ってもらえたらうれしいです」と笑顔を浮かべる。
実行委員5人が意見を一致させる箕面の魅力とは…
箕面の良さを5人に聞くと、「人と人とのつながり。皆さん本当に温かいんです!」と声を揃えて満面の笑みを咲かせる。地域に笑顔を取り戻そうと活動する高校生たちを、温かく見守り、サポートする地域の人々。11月3日の「みのおスマイルフェス」当日を待たずして、すでに笑顔の連鎖は始まっているようだ。
間近に迫ったイベント本番。5人はそれぞれの想いを明かした。
吉福「来ていただいた方にまず、高校生がこんなに地域を盛り上げたいと思っていることを感じてほしいのと、親子で参加していただいて、地域はもちろん、家族の温かみを感じてもらえたらと思います」
池田「イベントを通じて、箕面の良さでもある人の温かさを感じていただきたいですし、何よりも箕面には魅力あるお店がいっぱいあることを知っていただけたらと思います」
上松「去年、イベントの最後におばあさんが一人残って『すごい!』って拍手し続けてくれたんです。箕面の人ってほんまに優しいんやってうれしかったので、また地域の人たちとつながってみたいし、地域の人同士がつながれるような場所にしたいと思っています」
栗山「特産の柚子を使ったドリンクを通じて、箕面の良さをもっと知ってもらい、箕面に対する愛着心を深める場所にしてもらいたいです」
疋田「箕面の方の温かさはもちろん、今回のプロジェクトに100人以上集まったから出せる箕面自由学園らしいパワーであったり、一人一人の個性であったりを前面に出していけたらと思います」
11月3日、みのおキューズモールには色々な個性が光る笑顔が一面に咲きほこるはずだ。
【出演者募集】
プロカメラマンの南しずかさんが、あなたの部活やクラブ活動に打ち込む姿を撮りにいきます。運動系でも文化系でも、また学校の部活でも学校外での活動でもかまいません。何かに熱中している高校生・大学生で、普段の活動の一コマを作品として残したいという方(個人または3人までのグループ)を募集します。自薦他薦は問いません。
下記より応募フォームにアクセスし、注意事項をご確認の上、ご応募ください。皆様のご応募をお待ちしております。
■南しずか / Shizuka Minami
1979年、東京生まれ。2008年12月から米女子ゴルフツアーの取材をはじめ、大リーグなど主にプロスポーツイベントを撮影する。主なクライアントは、共同通信社、Sports Graphic Number、週刊ゴルフダイジェストなど。公式サイト:https://www.minamishizuka.com
南カメラマンがフィルムに焼き付けた「ゴコイチ」の笑顔
(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)