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文武両道の“リケジョ”チアガール トレードマークの笑顔で元気伝える幸せ【#青春のアザーカット】

学校のこと、将来のこと、恋愛のこと……ただでさえ悩みが多い学生の毎日。青春時代はあっという間に過ぎてしまうのに、今でもコロナ禍の影響がそこかしこにくすぶっている。

トレードマークの華やかな笑顔を見せる山ノ内さん【撮影:南しずか】
トレードマークの華やかな笑顔を見せる山ノ内さん【撮影:南しずか】

連載「#青春のアザーカット」カメラマン・南しずかが写真で切り取る学生たちの日常

 学校のこと、将来のこと、恋愛のこと……ただでさえ悩みが多い学生の毎日。青春時代はあっという間に過ぎてしまうのに、今でもコロナ禍の影響がそこかしこにくすぶっている。

 便利だけどなぜか実感の沸かないオンライン。マスクを外したら誰だか分からない新しい友人たち。楽しいけれど、どこかモヤモヤしてしまう。そんな気持ちを忘れさせてくれるのは、スポーツや音楽・芸術・勉強など、自分の好きなことに熱中する時間だったりする。

 そんな学生たちの姿を、スポーツ・芸術など幅広い分野の第一線で活躍するプロカメラマン・南しずかが切り取る連載「#青春(アオハル)のアザーカット」。何よりも大切なものは、地道に練習や準備を重ねた、いつもと変わらない毎日。その何気ない日常の1頁(ページ)をフィルムに焼き付けます。(取材・文=THE ANSWER編集部・佐藤 直子)

18頁目 品川CCオフィシャルリアリーダーズ・Rainbow Venus 山ノ内愛乃(まやの)さん

3歳の頃に見たXリーグチアリーダーたちの応援に魅了された【撮影:南しずか】
3歳の頃に見たXリーグチアリーダーたちの応援に魅了された【撮影:南しずか】

 文武両道の“リケジョ”チアだ。

 青山学院大学理工学部3年生。大学では「分かりやすく説明すると、ワイヤレス充電はどういう仕組みなんだろうとか、電気自動車ってどういうものなの?ということを勉強しています」という。

 同じくリケジョの南カメラマンとは「スター・ウォーズ」の話題で意気投合。コロナ禍の影響で外出が制限されていた時は「パソコンのタイピングが苦手だったので、タイピング練習を兼ねたゲームで腕を磨いていました」と振り返り、元気満点のチアスマイルを浮かべる。

 トレードマークは、周りを明るい光で包み込むような大きな笑顔だと胸を張る。

「ずっとチアをやっているのに、あまり踊りが上手じゃなくて。私にできることは何だろうって考えた時、小さい頃から先生や講師の方々に『笑顔がいいね』って褒めていただいていたので、笑顔だったら誰にも負けないんじゃないかと。だから、いつも笑顔を意識しながら踊っています」

 その自己分析は決して間違っていない。品川カルチャーベースの屋外コートで行われた取材当日。まるで山ノ内さんの笑顔に引き寄せられるかのように、道行く人が足を止め、フットサルを楽しむ人がプレー中に振り返り、撮影風景を眺めていく。男性ばかりではない。女性も子どもも、また然り。その笑顔には誰もを惹きつける魅力が備わっている。

3歳で出会い、憧れたXリーグのチアリーダーたち「素敵だな」

チアリーダーは選手と客席をつなぐ架け橋のような存在だという【撮影:南しずか】
チアリーダーは選手と客席をつなぐ架け橋のような存在だという【撮影:南しずか】

 チアと出会ったのは3歳の頃。父が毎年出場するトライアスロン大会の応援に出掛けると、そこで社会人アメリカンフットボール・Xリーグのチアリーダーチームが出場者を応援していた。かわいい衣装に身を包み、ポンポンを持って元気よく踊りながら大会を盛り上げるチアリーダーのお姉さんたち。輝くような姿に「素敵だな」と心つかまれ、チアとの恋に落ちた。

 すぐにチアを習い始めたかったが、小学生以下を対象とするスクールが近隣に見つからず。ようやく習うことができたのは7歳の時だった。踊りが中心のチアダンス、アクロバティックな動きも加わったチアリーディングを学び、小学校高学年からはチームとして大会やイベントにも出場。「みんなで一つの作品を作り上げる楽しさ、見る人に元気を伝える醍醐味を感じるようになりました」。

 中学生になると、プロバスケットボールの横浜ビー・コルセアーズのチアリーダーズ、B-ROSEのユースチームにオーディションを受けて加入。ここでは「応援チア」の魅力に触れたという。

「大会出場となるとどうしても成績が気になってしまうんですけど、応援チアは選手やスポーツを応援するだけではなく、観ているお客さんを楽しませることも役目。選手とお客さんを繋ぐ架け橋のような存在です。色々な方が笑顔になってくれるのを見て、自分も踊りながらさらに笑顔になれる楽しみもあります」

高校ではチアダンス同好会を創設、コーチとして指導役も

高校時代は受験に励みながらチア同好会コーチとしても活躍【撮影:南しずか】
高校時代は受験に励みながらチア同好会コーチとしても活躍【撮影:南しずか】

 高校ではチアへの情熱がさらに増した。湘南の海を眼前に臨む神奈川県立七里ヶ浜高校ではダンス部に所属。その一方、2017年には熊本地震の被災地を元気づける「100人チアプロジェクト」に参加したり、フットサル全国リーグのFリーグ・立川・府中アスレティックFC(現、立川アスレティックFC)のチアダンスチーム、アスレファンタジスタに加入したり。勉強も手を抜くことなく、文武両道の高校生活を送っていた。

 転機が訪れたのは、2年生の夏。七里ヶ浜高校では毎年夏になると、硬式野球部の県予選を応援するため、有志を募って即席チアを結成していた。毎年30人ほどが集まる人気の伝統。山ノ内さんも1年生から参加していたが、2年生での活動が終わる頃、一緒に参加していた友人が「短期ではなく、もっとしっかり通年でチアの活動したい」と漏らした。

「ちょうど私もダンス部でのユニットが解散するタイミングだったので、『やりたい子を集めて活動しようか』ということになりました」

 すぐに10人ほどが集まり、チアダンス同好会が発足。山ノ内さんはメンバーとして活動するだけではなく、兼任コーチとして指導にもあたった。

「チャレンジでしたね。私以外はほとんどが初心者で、バレエや新体操、ダンスの経験者も数人だけ。それでもみんな一生懸命頑張ってくれたので、大変だけど楽しい時間でした。同好会を作ってからみんなで初めて踊った舞台が、部活動紹介を兼ねた新入生歓迎会。そうしたら、なんと1年生が30人くらい入ってくれて、2年生でもチアをやりたいという子が集まってくれたんです」

 この時、山ノ内さんは3年生。受験勉強も大切だし、同好会やFリーグでのチアの活動も中途半端にはしたくない。「元々、勉強する時も科目の好き嫌いに関わらず、なんでも平等に取り組んでいたので、勉強もチアも優劣つけずに全てやろうという気持ちがありました」。大忙しの毎日を全力で駆け抜け、見事、大学合格を勝ち取った。

コロナ禍で勉強に専念も…「やっぱりチアをやりたい!」

コロナ禍で勉強に専念するも“チアロス”になってしまったという【撮影:南しずか】
コロナ禍で勉強に専念するも“チアロス”になってしまったという【撮影:南しずか】

 2020年4月に青山学院大学に入学。コロナ禍による非常事態宣言などの影響もあり、日本でスポーツが全般的に停止する間、色々と想いを巡らせた。考えた末、学内のチアリーディング部ではなく、応援チアの道を継続しようと決意。進学して間もないこともあり、スポーツ活動が再開するまでオンラインでの授業や課題レポートの作成など勉強に専念したものの、なんだか気分が落ち着かない。

「ずっと勉強とチアを両立してきたので、勉強だけになるとバランスが取れなくて。やっぱりチアをやりたい!ってもどかしい気持ちが続きました」

 人の縁は不思議なものでもある。Fリーグ・立川・府中アスレティックFCのアスレファンタジスタでは2人のディレクターの下、経験を積んだ。その1人、新條恵美子さんとは100人チアプロジェクトで出会い、もう1人の松田華衣さんは3歳の時に憧れたXリーグチアチームのメンバー。さらに、新條さんと松田さんは同じ高校のチア部だった親友という偶然。山ノ内さんは2人を「恩師」と慕う。

 コロナ禍中も少しずつ制限が解除され始めた2021年。新條さんが品川CCでRainbow Venusを立ち上げることになり、山ノ内さんはオーディションを受けることにした。コロナ以前のオーディションは、受験者が会場に集まり、その場で覚えた振り付けを審査員の前で披露するスタイルだった。だが、この時は事前にオンラインで振り付けを覚え、オーディション当日は会場でマウスシールドを着けてダンス審査という“コロナ仕様”。「不思議な体験でした」と振り返る。

トレードマークの笑顔で“声なし応援”でも元気を届ける

現在は品川CCのRainbow Venusで主に活動する【撮影:南しずか】
現在は品川CCのRainbow Venusで主に活動する【撮影:南しずか】

 Rainbow Venusに入って、今年で2年目。同じく品川CCに所属するXリーグのブルザイズ、3×3バスケのワイルドキャッツ、社会人サッカーリーグの品川CC横浜の応援が主な活動となる。応援チアと言えば、チアリーダーたちのハツラツとした掛け声も魅力の一つだが、スポーツイベントを安全に開催するため、しばらくは声を出さない応援が続いた。もどかしい気持ちもあったが、それは観客も選手もみんな同じ。トレードマークの弾けるような笑顔を振りまきながら、「少しでも勇気と元気と笑顔を届けられるように、チームメンバーと頑張ってきました」と胸を張る。

 チアの活動を通じて、社会に元気を届けたいという山ノ内さん。だが、よくよく考えてみると「私自身が奮い立たされるというか、踊っていると自然と笑顔になれるんです」と嬉しそうに微笑む。

 高校のチアダンス同好会は今年から部に昇格し、山ノ内さんはコーチに就任した。その一方、電気電子工学について学びを深めたいと大学院進学を目指す。まだまだ続く文武両道の道。この先、何が起こっても、元気に笑顔で乗り越えていく。

【出演者募集】
プロカメラマンの南しずかさんが、あなたの部活やクラブ活動に打ち込む姿を撮りにいきます。運動系でも文化系でも、また学校の部活でも学校外での活動でもかまいません。何かに熱中している高校生・大学生で、普段の活動の一コマを作品として残したいという方(個人または3人までのグループ)を募集します。自薦他薦は問いません。
下記より応募フォームにアクセスし、注意事項をご確認の上、ご応募ください。
皆様のご応募をお待ちしております。

■南しずか / Shizuka Minami

1979年、東京生まれ。2008年12月から米女子ゴルフツアーの取材をはじめ、大リーグなど主にプロスポーツイベントを撮影する。主なクライアントは、共同通信社、Sports Graphic Number、週刊ゴルフダイジェストなど。公式サイト:https://www.minamishizuka.com

南カメラマンがレンズで捉えた山ノ内さんの満点笑顔

撮影協力:Pictures Studio赤坂、品川カルチャーベース・カリーコート天王洲アイル

(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)

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