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東海大山形がPK戦制し2回戦へ 後半終了1分前に投入の“PK職人”がビッグセーブ連発

降りしきる雨の中、23年ぶりの出場となった東海大山形の主将、梅津太智は敗北の足音を感じていた。

雨中のPK戦制し歓喜する東海大山形【写真:川端暁彦】
雨中のPK戦制し歓喜する東海大山形【写真:川端暁彦】

高校総体サッカー男子、途中出場のGK太田朋輝が敗戦危機救う

 降りしきる雨の中、23年ぶりの出場となった東海大山形の主将、梅津太智は敗北の足音を感じていた。

「やばい。負けるな」

 敗戦を覚悟する状況だったのは間違いない。14日の全国高校総体(インターハイ)のサッカー男子、尽誠学園(香川)との1回戦は、東海大山形が優位に試合を運びながらも、0-0のまま決着付かず。迎えたPK戦は相手の1番手を味方のGKが止める幸先の良いスタートを切りながら、味方の4番手と5番手のキッカーが連続で失敗。相手の5番手のキッカーが決めれば、終幕である。

 ただ、不思議と東海大山形の雰囲気は明るかった。「暗くしても外した選手がつらくなるだけで意味がない」という梅津主将は、笑顔すら浮かべて盛り上げて、こんな言葉をかけた。

「大丈夫。きっと止めてくれる」

 その視線の先にいたのはGKの太田朋輝。彼がピッチに入ったのは後半終了1分前のこと。同姓の正GKである太田智大に代わって、PK戦に向けて送り込まれていた。

「高校総体は試合時間が短い上に、延長戦もない。PK戦は想定して準備をしてきていた。太田朋は練習からPKが本当に強いので」(五十嵐直史監督)

 そんな信頼に応えるように、いきなり1人目をビッグセーブし、そして決められたら終わりの5人目もここで見事に阻止してみせる。その後は梅津主将中心に明るく盛り上がる東海大山形が全員成功しながら、相手の失敗を待つ形に。こうなると、統計的にも先行が有利になるもので、迎えた9番手で明暗が分かれた。

「相手が左にずっと蹴ってきていたので、どこかで右に来ると思っていた」

 極度の緊張状態に陥りそうなこの場面でもクールだった守護神は、「最初に相手の目線だけ見て、踏み込んで跳んだ」とこのシュートを見事にセーブ。チームを2回戦へと導いた。

 代わった正GKの太田智は中学校の同級生だが、自身が部活でのプレーを選択していたのに対し、太田智はJリーグ・モンテディオ山形の下部組織でプレーしていたため、共にプレーしたわけではない。ピッチの上ではなく、教室の中での関係性を築いてきた2人が同じ高校を選んだことで、2年半にわたって「いまはライバルとして」(太田朋)切磋琢磨する関係となった。

 その技量に対して敬意を持ち、マネしたこともあるというライバルからPK戦を前にゴールを託された以上、絶対に負けるわけにはいかない。そんな思いが実を結ぶ、雨中の熱いPK戦だった。

(川端 暁彦 / Akihiko Kawabata)

川端 暁彦

1979年生まれ。フリーライターとして育成年代を中心に取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に携わる。同紙の記者、編集者として取材を重ね、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。その後はフリーランスとしての活動を再開。育成年代からJリーグ、日本代表まで幅広く取材し、各種媒体に寄稿している。著書に『2050年W杯日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)、『Jの新人』(東邦出版)ほか。

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