逆境にこそ立ち向かえ― 聖和学園、“県2番手”から見据える未来の頂点へのレール
県王者・明成が全国との“モノサシ” 「明成と良い勝負ができないと通用しない」
同県に全国トップクラスの明成が存在する環境は、強化を難しくする。有望な中学生は、全国大会での活躍を狙ってチームを選ぶ。県内出身者が他県で全国出場を狙えるチームを選ぶケースもある。その中で、県内の子を必死にスカウトしている。
ポイントガードの菅野勇太は、中学時代に地区予選で敗退するのが常で県大会に出場したことのない選手だ。身長191センチの大型センター長牛翼は、中学時代に勝利を経験したことがないという。
それでも、阿部昭宏コーチは「(明成に良い選手が集まる状況下で)県内の選手だけで苦しいんじゃないかと言われることもありますけど、私は選手に合うメニューを組んで鍛えれば全国で勝てると思っています。まだ、私が指導者として未熟で上手くいっていませんけど、来るメンバーに合う練習を考えてチームを作っているので、ここまでは来れています」と意地をのぞかせた。明成がいるから無理、なのではなく、いるから立ち向かっていくのだ。阿部コーチは、同県に横綱クラスのチームがいることを、前向きに捉えている。
「なかなか、全国大会に出られない。たまにチャンスを得ても、選手は全国レベルを肌で感じていないので、チーム作りが難しい。ただ、明成が本当に全国のトップなので、県大会の決勝で対戦して感じることはできる。明成と良い勝負ができないと通用しない。3回目の出場ですが、2011年は明成を破って出場して16強、3年前は明成のおこぼれで出場しましたけど、10点差くらいのゲームはできていて、全国大会で16強に入れました。今回は、明成とだいぶ差があった中での出場だったので、こういう結果。県内で明成と勝負できるかが基準」
今は、まだ県の2番手――。明成の活躍によって得られるチャンスを生かそうとする立場にある。しかし、その間に全国レベルを少しずつ体感し、県の王者を打ち負かしにいく。明成に勝って全国に出られれば、全国レベルに戸惑うことなく上位を目指せる。強敵が近くにいるからこそ、聖和学園には頂点へのレールが見えている。
(平野 貴也 / Takaya Hirano)