技術面でもメンタル面でも、大事なことは「Simple is the best」

　1週間のテスト期間中に部活動が休みとなり、以前と弓を引く感覚が変わってしまったという高校生には、「弓道場ではないところでもできる練習をしましょう」と話しかけた。かつて、アキレス腱断裂や肩の故障で弓を引けない時期があったという増渕さんは、自身の経験を踏まえながら「家で素引きをしたり、弓懸をはめて感覚を忘れないように」することを勧めた。

　さらに、増渕さんは「自分の中に『こうやって引くんだ』という設計図ができています」と明かす。自分の設計図にあった弓の引き方をできるように、筋力が維持するために素引きをしたり、怪我防止のために体幹トレーニングをしたりするなど、普段心掛けていることについても触れた。

　技術の質問に対しても、メンタル面の質問に対しても、増渕さんのメッセージは「Simple is the best」「基本に忠実であること」「準備を怠らないこと」が土台となっている。参加した約80人の高校生たちは、時に大きく首を縦に振りながら、目を輝かせて60分の“授業”に耳を傾けた。

　授業の最後には増渕さんから高校生にメッセージが送られた。

「皆さん、生徒同士で教え合うと思いますけど、教え合う時には基準が必要ですね。弓道には弓道教本というものがあります。その中にある射法八節の図解を基準として教え合うようにして下さい」

　自身にとってのターニングポイントとなった高校1年生の時、増渕さんが向き合った弓道教本。基礎を大切にすることが飛躍に繋がるという大切なエールは、参加者の心に刻まれることだろう。

■オンラインエール授業　「インハイ.tv」と全国高体連がインターハイ全30競技の部活生に向けた「明日へのエールプロジェクト」の一環。アスリート、指導者らが高校生の「いまとこれから」をオンラインで話し合う。授業は「インハイ.tv」で配信され、誰でも視聴できる。