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「苦しい思いに蓋をしないで」 大山加奈が画面を越え、高校生に寄り添った“夢授業”

予想外だったキツイ言葉、荒木との「大喧嘩」で気づかされたこと

「いつまで泣いてるんだよ! キャプテンなんだからしっかりしろよ!」

 かけられたのは予想外のキツイ言葉だった。大山さんも思うところがあった。荒木は負けた翌日にケロッとして笑っていた。「私はこんなに悩んでいるのに悔しくないのか」。その一言を発端に「大喧嘩になった」という。「想像して? 荒木選手と私の大喧嘩、怖いよね」とジョークも交えたが、結果的に2人は大親友になれた。なぜか。この一件を通して、気づいたことがあった。

「なぜ、荒木選手は笑っていたかというと、落ち込んでいてもしょうがない。日本一になるには切り替えないといけない。だから、悔しさを隠していた。泣いている人と笑っている人、行動は正反対だったけど、思っていることは一緒だった。『日本一になりたい』と本気で思っていることが喧嘩して伝わった。だから、今となっては怒ってくれた荒木選手にはすごく感謝しています」

 どんな言葉をぶつけ合ったか、よく覚えていないほど、感情的になったという。しかし、この経験から伝えたいことがある。

「仲間を『怒る』『しかる』はすごく勇気がいること。でも、本気で自分を思っている言葉であれば相手に伝わる。荒木選手は憎かったり、嫌いだったりしたから怒ったわけじゃなく、私に『キャプテンとして頑張ってほしい』という思いがあったから、勇気を出して怒ってくれた。その愛が伝わったから大親友になれたし、チームがぐっと固まって、3冠につながっていったんです。

 皆さんも悩むところだと思うんです。『もっとこうしたい、ああしたい』と思うけど、『こんなことを言って嫌われたら嫌だな』って。どうしても思ってしまう、それは嫌われたくないから。でも、ちゃんと相手のことを本気で思う言葉であれば、必ず伝わるから。それを信じて、お互いに言いたいことがあったら言い合える。そういう信頼関係を築いていったほしいなと思います」

 のちの代表選手同士の意外なエピソードで示した相手を本気で思う気持ち。スポーツをする上で大切なことを伝えたかった。

 続いて行われた質問コーナーでは、次々に質問が飛び出した。大山さんは一つ一つに親身になって答えていく。例えば――。

「ミスをした後にネガティブになってしまう、どうポジティブに変えればいいか」という悩みには「バレーで貢献するのはプレーだけじゃない。声も同じくらい貢献できる。調子が悪かったら誰よりも大きな声を出すこと、誰よりも喜ぶこと。そうすると、プレーがダメでも自分が貢献できているとポジティブになれて、そのうちにプレーも戻ってくる。声は必ず武器になってくれる」。

「スポーツ選手として、私生活で気をつけていたこと」という問いには「目標を達成するためには、それに相応しい人間になること。中学1、2年の時は勝てず、当時は授業中に寝たり、ひどい時は漫画を読んだりしていた。私がこんなんだから日本一になれないと。そこから授業を一生懸命聞いて、ノートを取って、いい点数を取った。すると、学校の先生からバレーボールを応援されるようになった。それが力になり、日本一になることができた。目標に相応しく、たくさんの人に応援される人になってほしい」。

「今年は夏以降の大会まで期間が空く。モチベーションを保つにはどうしたらいいか」という質問には「本当に難しいことだし、誰も経験したことがない。でも、先を見すぎると苦しくなるもの。試合に目標を置くのではなく、ストレートが苦手なので打てるようにしようとか、ジャンプ力を2センチ上げられるようにしようとか。中くらい、小さな目標が今だからこそ、大切になる」。

「プレーの波が激しい。調子が悪い時にどうしたらいいか」という声には「波が下にある時は一人になりがち。みんなと目が合わなくなる。だから、スパイクが決まらない時はまず目を合わせるようにすると視線が上がる。いい時は盛り上がるけど、一人の調子が悪い時、チームの空気が悪い時は6人が点になる。そうなると、ボールはつながらない。6人を線でつなぐことを意識して」。

 こうして一人一人の質問に対して、逆に問いを返しながら丁寧に答えた大山さん。その中で感情が高ぶった質問が一つあった。

「この期間で練習をすることができません。不安、焦りが出てきているのですが、どう気持ちの切り替えをしたらいいですか?」

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