3戦全敗に終わった男子バスケ日本の誤算 期待の2人が3P不発「使えなかったのか使わなかったのか」【渡邉拓馬の目】
日本バスケのさらなる進化へ Bリーグの盛り上げ、高体連・中体連の強化や見直しも
ブラジル戦に関して言えば、相手も死に物狂いでした。ここまで0勝2敗で日本とまったく同じ状況で迎えた3戦目。条件は同じで、勝利に加えて1点でも多くの得点差が必要でした。そういった気迫がシュートに乗り移っていたのか、前半は90%近い3Pシュート成功率を誇っていた。重要な試合とはいえ、これだけ決まるのは稀なこと。サイズとスキルとメンタルと経験に想いが加わったブラジルは、紛れもなく強いチームでした。
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その相手に対して終盤に2点差まで詰め寄ったのは地力がついた証明。河村勇輝選手があれくらいのパフォーマンスを見せてくれることはW杯の活躍を考えれば驚きではありませんし、ジョシュ・ホーキンソン選手も素晴らしい働きでした。吉井裕鷹選手は攻守においてタフに戦い続け、今大会はあまり目立っていなかった馬場雄大選手も見せ場を作りました。
惜しむらくは、シューターの比江島慎選手と富永啓生選手の2選手に当たりが出なかったこと。彼らは3試合トータルで計1本しか3Pシュートを決められなかった。これは戦前に予想するのは難しい誤算と言っていいと思いますし、プレータイムを増やせずにリズムをつかめないまま五輪が終わってしまいました。
使わなかったのか、使えなかったのか。トム・ホーバスヘッドコーチの思考回路は見えませんが、もしかしたら周りが想像する以上にサイズが必要という想定で戦っていた可能性はあります。八村選手が加わることで全体のバランスが変わった部分もあるでしょう。コート上で体感しないと分からない温度もありますが、本大会に入ってからも戦い方を探っていた印象です。
アメリカやセルビアといった強豪国は大会直前に選手が集まっても、即興でチームを作れます。ですが、日本はまだそこまでのレベルに達していない。海外で活躍する選手をさらに増やしていくことが必要で、これからNBAの舞台を目指す河村選手や富永選手への期待は大きい。そこで得た経験を日本代表に還元することで、次のステップへ進めるのです。
サッカーもW杯に出場できない時代にドーハの悲劇を味わい、初出場のフランス大会では3戦全敗でした。それが今では代表選手の多くが海外でプレーするほどに発展しました。ただ、どうしても時間はかかります。バスケット界はBリーグを盛り上げていく取り組みを考え、高体連や中体連の強化や見直しも必要でしょう。
それでも3戦全敗という結果でここまでの歩みすべてが否定されるべきではありません。五輪という特別な大会でここまで戦えたことは自信にするべきですし、世界に向けて日本バスケットの成長を発信できたはず。この悔しさを次の代表チームが引き継ぎ、ロサンゼルス五輪でまずは1勝することが使命です。
(藤井雅彦 / Masahiko Fujii)