W杯バスケ日本を救った「比江島タイム」発動の理由 渡邉拓馬「センスは他の選手とは格が違う」
もう一人の勝利の立役者は渡邊雄太「ヒーローは譲ったかもしれないが…」
特筆すべきは、その決定力をどの相手、どんな状況でも発揮できる点です。世界の強豪相手にも物怖じしないメンタルの強さも持ち合わせていて、強豪国相手でも重要な局面で決めてくれる。難しいシュートをいとも簡単に決めるセンスは他の選手とは格の違いを感じさせます。同じタイプの選手はなかなか現れないでしょうし、サッカー選手で例えるとメッシ選手のような抜きん出た存在です。
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今回の日本代表は渡邊雄太選手や富樫勇樹選手を中心にして構成していますが、比江島選手の活躍を待ち焦がれていた関係者とファンはたくさんいたはず。僕自身も同じバスケットマンとして彼の活躍が本当に嬉しいですし、パリオリンピックでも見たい選手の1人です。
渡邊選手が見せた連続ブロックと安定した得点力も見事で、大黒柱と呼ぶにふさわしいプレーでした。それに加えて彼はファン心理を煽ることも上手で、会場の雰囲気を盛り上げることにも一役買っていました。この試合ではヒーローの座を比江島選手に譲ったかもしれませんが、間違いなく勝利の立役者の1人です。
手ごわい相手に逆転勝利したことで、さらに大きな自信を得ました。そして、その自信を発揮するための試合が、もう1つ残っています。自力でパリオリンピック出場権を勝ち取れる状況が整い、あとは持っている力を出し切るのみ。未だかつてないプレッシャーがかかる試合で誰がシュートを決めてくれるのか。楽しみしかありません。
個人的には渡邊選手と河村勇輝選手に注目しています。渡邊選手は毎試合コンスタントに20得点前後を決めていて、河村選手はこの大会を通してさらに成長しています。馬場雄大選手や富永啓生選手も黙っていないはず。勝利したフィンランド選手とベネズエラ戦では特定の選手が得点を稼ぎましたが、15得点前後の選手が4~5人いるのが理想。強いチームは得点者が分散し、相手が的を絞りにくい状況になれば勝利が近づきます。
ここまでの彼らのプレーを見るかぎり、最後までスタイルを貫いてくれるでしょう。そこに疑いの余地はありません。期待外れの試合になる不安はまったくないですし、大きな勲章を勝ち取るイメージしか湧きません。今大会の集大成となるゲームで、日本バスケット界の歴史に新たな1ページを書き加えてもらいたい。
(藤井雅彦 / Masahiko Fujii)