なでしこ、快進撃8強に見た日本女子サッカーの成長の跡 永里亜紗乃「縦に速い攻撃ができるように」
サッカーのFIFA女子ワールドカップ(W杯)オーストラリア・ニュージーランド大会は5日、ニュージーランド・ウェリントンで行われた決勝トーナメント1回戦で日本代表・なでしこジャパンがノルウェーを3-1で下し、準優勝したカナダ大会以来2大会ぶりの8強入りを決めた。当時の準優勝メンバーでもある元日本代表FWの解説者・永里亜紗乃さんは1次リーグから全勝の快進撃を続ける後輩たちを称賛し、特に3点目に見られた日本の女子サッカーの成長を特筆した。(構成=藤井 雅彦)
2015年W杯カナダ大会準優勝メンバーの元日本代表FW永里亜紗乃さんが解説
サッカーのFIFA女子ワールドカップ(W杯)オーストラリア・ニュージーランド大会は5日、ニュージーランド・ウェリントンで行われた決勝トーナメント1回戦で日本代表・なでしこジャパンがノルウェーを3-1で下し、準優勝したカナダ大会以来2大会ぶりの8強入りを決めた。当時の準優勝メンバーでもある元日本代表FWの解説者・永里亜紗乃さんは1次リーグから全勝の快進撃を続ける後輩たちを称賛し、特に3点目に見られた日本の女子サッカーの成長を特筆した。(構成=藤井 雅彦)
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自分たちの良さを出すために、しっかり考えて戦ったことがよく見えたゲームでした。
ノルウェーは自陣に引いて守備に軸足を置いて臨んできました。システムも従来の4バックではなく5バックで、守ることに人数を割いてきた。グループリーグのスペイン戦で日本が鋭いカウンターから得点を奪っていた様子を見て、すぐさま対策を講じてきたわけです。
武器とするカウンターをいかに繰り出すか。これが試合の焦点でした。そのためには、月並みですが失点しないことが最も重要になります。ノルウェーに先制点を与えてしまえば、さらに下がって自陣ゴール前を固めてくるでしょう。そうなればスペースがさらになくなり、精神的にも徐々に追い込まれてしまう。
リスクを冒さずに先制点を取る形が理想でした。それが自分たちの形に持っていくための第一歩で、実際に立ち上がりから落ち着いてボールを動かせていました。左サイドから攻めるという共通理解を持ってプレーしていたのもポイントで、相手のオウンゴールによって生まれた先制点も左サイドから試みた攻撃でした。
得点直後に追いつかれたのは修正すべき点で、W杯の決勝トーナメントが一筋縄ではいかないことを暗示していたと言えるでしょう。先制を許したノルウェーが前がかりになるのを分かっていながら、得意としているクロスからのヘディングシュートを決められてしまった。
でも日本に慌てている様子はまったくありませんでした。失点を想定内と表現するのは語弊があるかもしれないけれど、実力差がほとんどない国との対戦ではスコアの推移まで考えておくのがベスト。失点しても動揺せず、振り出しに戻っただけと思えば平常心を保ちやすいですから。
リードを許す展開だけは避けたかったので、勝ち越し点となる2点目を奪えたのが本当に大きかった。引いて守る相手を押し込むだけでなく、失ったボールへのリアクションが素晴らしかったです。奪われてもすぐに奪い返す、あるいはボールを下げさせて相手にカウンターのチャンスを与えない。
攻撃から守備への切り替えがスムーズにできていたのは、距離感良く攻めていた証でしょう。清水梨紗選手のゴールは一度奪われたボールを、相手ゴール前で奪い返して決めたもの。チームとしてパスコースを限定できていたからこそで、ただ下がろうとしなかった清水選手の状況判断も光りました。
再びリードできたこと、そして残り時間が少なくなっていく中で、日本が理想とする状況がだんだん見えてきました。ノルウェーは自陣にスペースを作りたくないけれど、前に出なければ得点を奪えない。選手交代を使いながら前傾姿勢を強めてきました。