川口能活の目 大迫は文句なしのMVP、GK目線で感じる失点シーンの選択肢
「この試合のすべて」といっても過言ではない大迫のプレー
対照的に、日本は途中出場の本田圭佑選手がCKからアシストし、決定的な仕事をしてくれました。この試合ではベンチスタートだったこともあり、試合後のインタビューでは勝利への満足感だけでなく、悔しさや課題を口にしていました。でも僕は、そこに本田選手のW杯にかける覚悟を感じました。決勝点をアシストした素晴らしいキックは彼の実力ですし、あらためて精神的な強さを感じさせてくれました。
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そして最も印象的な選手を選ぶとしたら大迫勇也選手しかいません。決勝ゴールとなったヘディングシュートも素晴らしかったですが、78分にハメス・ロドリゲス選手のシュートに身体を投げ出してブロックした場面が『この試合のすべて』といっても過言ではありません。前線でボールを引き出すために献身的にランニングし、縦パスを受けて屈強なDFに競り勝ち、さらにゴールを決めて、ゴールも守った。文句なしのMVPです。
この勝利は決して番狂わせではなく、プラン通りにゲームを進めた結果だと思います。日本がボールを支配している時間のほうが長かったですし、ゲームの中でストレスを感じる時間が少なかった。対南米勢との対戦成績や下馬評から見ると番狂わせかもしれませんが、内容的には日本の完勝でした。
2010年の南アフリカW杯でも、初戦のカメルーン戦に勝利するまでは不安が大きかったのが本当のところです。この勝利で2戦目以降に向けて精神的な余裕が生まれるのは間違いないですし、雰囲気が良くなることでポジティブに要求し合える状況が生まれます。まだ何も勝ち取ったわけではありませんが、次戦以降はより日本らしいスタイルで伸び伸びとしたサッカーを見せてくれるのではないでしょうか。
(SC相模原GK川口能活=元日本代表/98年フランス大会、02年日韓大会、06年ドイツ大会、10年南アフリカ大会出場)
(藤井雅彦 / Masahiko Fujii)