韓国21歳エースのチェンジアップが「厄介」な理由 「変化」と「奥行き」の融合型球種
「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカタ」と題し、実施される競技の新たな知識・視点のほか、平和・人権・多様性など五輪を通して得られる様々な“見方”を随時発信する。多くのプロ野球選手も加入するパフォーマンスオンラインサロン「NEOREBASE」主宰、ピッチングストラテジストの内田聖人氏は投手の“球”を独自の「ミカタ」で解説する。
「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」#39
「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカタ」と題し、実施される競技の新たな知識・視点のほか、平和・人権・多様性など五輪を通して得られる様々な“見方”を随時発信する。多くのプロ野球選手も加入するパフォーマンスオンラインサロン「NEOREBASE」主宰、ピッチングストラテジストの内田聖人氏は投手の“球”を独自の「ミカタ」で解説する。
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韓国は30日の初戦でイスラエルに6-5で延長10回逆転サヨナラ勝ち。日本の稲葉篤紀監督が視察する中、注目されたのは21歳のエース、ウォン・デイン投手だ。スライダーをうまく打たれた一発もあり4回途中2失点だったが、初回先頭から4者連続を含む5奪三振。すべて空振り、うち4つを奪った絶対的な武器チェンジアップを分析した。(取材・構成=THE ANSWER編集部・神原 英彰)
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ウォン投手のチェンジアップは本当に素晴らしい球でした。
そもそもチェンジアップという球種について説明すると、右投手のオーバーハンドの場合、大きく分けて「変化系」「奥行き系」の2つのタイプがあると、私は考えています。
1つ目の変化系は、文字通り球に変化が加わるタイプです。
この中には2種類のパターンがあり、一つは指先でサイドスピンをかけ、シュートしながら落ちるシンカーのような軌道。私の大学の1年先輩である有原航平投手(レンジャーズ)がよく投げます。もう一つは挟むような握りでジャイロスピンかサイドスピンをかけ、落差のあるフォークのような軌道。これは前田健太投手(ツインズ)が投げています。
2つ目の奥行き系はまっすぐと同じ回転で球速が遅く、打者の(前後の奥行きで)タイミングをずらすタイプ。金子千尋投手(日本ハム)が素晴らしい代表格です。
ウォン投手はサイドスピンをかけながら球速が遅くなる、変化系と奥行き系の両方を兼ね備えている。スピンのパターンもツーシーム系の回転で横に滑り、独特の変化をする。2つのタイプが合わさって、なかなか打ちづらいタイプです。
リリースをもう少し具体的に見ると、中指の外側(薬指側)でうまくボールを切っていることで、本来のストレートの回転よりサイドスピンが加わり、ツーシーム系の回転にしている。かなり厄介な球だと思います。
韓国リーグの映像も確認しましたが、カウントを取りに行く場面で真ん中付近に投げたり、三振を取りに行く場面でストライクからボールになる軌道で投げたり。打者の右左も関係ない。
フォームとしてもここまで腕を振り、チェンジアップ主体に投げる投手は、日本ではなかなか見かけません。シーム(縫い目)との相性が良く、空気抵抗で打者にとっては嫌な変化を生み出していると思います。