突破のなでしこに今、敢えて問う覚悟 永里亜紗乃「日の丸背負う意味、理解しているか」
「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカタ」と題し、実施される競技の新たな知識・視点のほか、五輪を通して得られる多様な“見方”を随時発信する。1分け1敗で迎えたグループリーグ最終戦、サッカー女子日本代表・なでしこジャパンは格下のチリと対戦し、田中美南のゴールで1-0とようやく今大会初勝利を挙げた。元日本代表FWで2015年ワールドカップ(W杯)カナダ大会準優勝メンバーの解説者・永里亜紗乃さんはこの試合にどんな「ミカタ」を持ったのか。(構成=藤井 雅彦)
「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」#27
「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカタ」と題し、実施される競技の新たな知識・視点のほか、五輪を通して得られる多様な“見方”を随時発信する。1分け1敗で迎えたグループリーグ最終戦、サッカー女子日本代表・なでしこジャパンは格下のチリと対戦し、田中美南のゴールで1-0とようやく今大会初勝利を挙げた。元日本代表FWで2015年ワールドカップ(W杯)カナダ大会準優勝メンバーの解説者・永里亜紗乃さんはこの試合にどんな「ミカタ」を持ったのか。(構成=藤井 雅彦)
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これまでに対戦したカナダやイギリスと違って、チリは明らかな格下のチームでした。誤解を恐れず言えば、10回対戦して10回勝てる相手。だからこの勝利は当然の結果です。
序盤から圧倒的に攻め込んでいたのも普通の現象と言っていい。個人を見ても日本のほうが明らかに技術的には上で、ボールを保持して優位に立てることも想像できていました。守備場の面でも、チリに単純なミスが多いおかげで苦労せずに奪い返せました。両チームの間にはそれくらいに大きな差があったのです。
それなのに得点を奪うまでに時間が掛かり過ぎてしまいました。前半からゴールになりそうなシーンはいくつかありましたが、相手との力の差を考えるともっと多くのチャンスを作れたはずです。そのチャンスも、例えば90%以上の確率で決められるような決定機を作らなければいけませんでした。
グループリーグの3戦を通じて感じたのは、攻守において成長がほとんど見られないもどかしさです。
攻撃は個の力に頼っているのが現状としてあります。ある程度メンバーを固定してチーム作りを進めてきたにもかかわらず、崩しの精度が上がらず、クロス攻撃のバリエーションも増えない。
守備でも、自分たちが意図した形でボールを奪う場面がほとんどなかった。攻撃と同じく個々の能力や頑張りで凌いでいますが、チームとして共通の狙いを持った守備が少なすぎます。ここからは強い国との対戦が続くので、受け身になってしまうと相手に自由を与えてしまいます。
決勝トーナメントは一発勝負の戦いです。1点を争うシチュエーションになった時、日本は攻守両面に不安を抱えています。次のラウンドに進めたことはひと安心。だけど内容とこれからを考えると全く満足できません。少なくとも、戦前から抱いていた不安を打ち消してくれるような戦いではなかった。