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中1で一番弱くて泣いていた大野将平、連覇の理由 北田典子「試合後、当時の顔に戻った」

「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカタ」と題し、実施される競技の新たな知識・視点のほか、平和・人権・多様性など五輪を通して得られる様々な“見方”を随時発信する。金メダルラッシュが期待される柔道は注目階級を専門家が独自の「ミカタ」で解説。男子73キロ級で連覇を達成した大野将平(旭化成)を柔道私塾「講道学舎」で指導したソウル五輪銅メダルの北田典子氏が、9分26秒に及んだ決勝の勝因を分析しつつ、エピソードを明かした(取材・構成=THE ANSWER編集部)

男子73キロ級で連覇を達成した大野将平の勝因を分析【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】
男子73キロ級で連覇を達成した大野将平の勝因を分析【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」#22

「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカタ」と題し、実施される競技の新たな知識・視点のほか、平和・人権・多様性など五輪を通して得られる様々な“見方”を随時発信する。金メダルラッシュが期待される柔道は注目階級を専門家が独自の「ミカタ」で解説。男子73キロ級で連覇を達成した大野将平(旭化成)を柔道私塾「講道学舎」で指導したソウル五輪銅メダルの北田典子氏が、9分26秒に及んだ決勝の勝因を分析しつつ、エピソードを明かした(取材・構成=THE ANSWER編集部)

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 みんな大野選手が楽に勝つんじゃないかなって予想していたと思うんですけど、これが五輪。そう簡単には取らせてくれない。でも、その中で、よく辛抱して辛抱して辛抱して、集中力切らさずに頑張れたことが金メダルにつながったと思います。

 決勝の相手(ラシャ・シャフダトゥアシビリ=ジョージア)は徹底して研究していましたし、試合への思いもすごく強かった。だからこそ、素晴らしい試合展開になったと思います。大野選手の最近のコメントを聞くと、本当に修行僧のような、本当に祈る気持ちで毎日を過ごしてきたんだろうなと思っていました。試合後、彼はインタビューで目に涙が出ているけど、泣いちゃいけないって我慢をしている表情をしていましたね。あの表情を見たら、中学1年生のときの泣きながら練習をやっていた顔に戻ったなっていう感じがしました。すごく素直な大野選手の顔に戻ったなって。

 自分との闘いということを彼も常に言いますけど、やっぱり日本柔道を背負ってという責任があったと思います。単に自分が五輪2連覇ということだけじゃなくて、日本柔道界のためにという思いがすごく強かった。そこの責任を果たすというプレッシャーが大きかった。あの子はインタビューなどで涙を見せない。よほど苦しかったんだろうなというのが伝わってきました。今日のインタビューは今まで一番よかったと思います。

 決勝は自分の柔道をさせてもらえず、なかなかタイミングやリズムを作らせてもらえなかった。我慢、我慢っていうのが大野選手の口癖ですけど、我慢しながら、つないでいったっていうところがよかったです。引き手は常に彼が最初に取ってますから、釣り手を持った瞬間に技に入る。だから相手は徹底して、釣り手を取らせない。釣り手を取れないと、大野選手のリズムも作れないです。彼の場合は2本しっかり持って投げるっていうのが基本ですから。

 ただ、大野選手は強いですから、相手は技に入りたくても入れない。何回か入りましたけど、普通の選手では入れないです。入ったとしても、彼の軸がぶれない。大野選手は自分自身がかける技の素晴らしさもありますけど、やはり、受けの強さ。そして、相手に技に入らせない強さも、チャンピオンであり続ける要因であると思います。危なげは感じませんでしたけど、お互い後半、スタミナが切れてきた。五輪の舞台ってフッと魔が差す瞬間がある。それだけでした。怖さというのは。だけど、大野選手自身に不安はなかった。集中力さえ切らさなければ、いけるだろうと信じていました。

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