「美人すぎる○○」に賛否 10代からアイドル化、盗撮問題も…「可愛い」報道は世界共通の課題――女性アスリートと報道
荒木さんが見た「メグカナ」の葛藤「しなくていい苦労をしていた」
――荒木さんは女子バレー人気全盛時代を歩みました。特に、同い年だった栗原恵選手と大山加奈選手は「プリンセス・メグ」「パワフル・カナ」という愛称がメディアにつけられ、過剰な報道を肌で感じていたと思います。
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荒木「『メグカナ』はアイドル化された存在で、仲間として近くで見ていた身としてはキツそうだなと感じていました。今なら『大人の事情もあるよね』『競技普及には必要かな』と理解しようとするけど、最初注目されたのが10代。試合に出ていない時もずっとカメラを向けられたりして、当時は2人ともかなり苦しかったと思います」
伊藤「若い子にはキツいですね。そもそも競技を見てくれない」
荒木「彼女たちも10代ということもあり、いろんなことに追いついてなかったから、本当にしなくていい苦労をしていたと思います。でも、今はバレーボールは『プリンセス・メグ』のようなキャッチコピーはつけない。報道の仕方も変わっていますね」
伊藤「今は小学校も呼び方が『くん』『ちゃん』じゃなくて『さん』にする傾向もあるくらいですしね」
荒木「ただ、当時は盗撮も今みたいに会場での規制もない時代でした。女性としていやらしい写真を撮られたり、それが週刊誌に載ったりするようなことも……。そういう意味ではすごく苦しそうで。自分はアスリートだから、競技に集中したいという想いがあるのに、そういった声や見られ方がたくさんあって酷だなと思っていました」
伊藤「私もありました。競技とは関係ない、プールから上がろうとしているところを写真に撮られて、それがそのまま週刊誌に載ってしまったりして」
――一方でSNSの普及もあり、「可愛い」「美人」と言われることを利用してスポンサー獲得につなげるなど、容姿を武器にしている選手もいます。実際、パリ五輪に出場する陸上のアリカ・シュミット選手(ドイツ)はモデルとしても活躍し、インスタグラムのフォロワーは500万人超。ドイツでは陸上選手の環境が恵まれているとは言えず、その知名度を生かして獲得したスポンサーが競技を助けていると話しています。
伊藤「美人と言われることが好きな人もいるし、嫌な人もいる。そこだけを見れば、どちらでもいいと思います。一方で、容姿にこだわる風潮がどこから作り上げられたのかを考えると、ふくよか、痩せているということでしか判断ができなかった社会の歴史がある。そう見る人は個人の自由だし、生き方もそれぞれ。だけど、『美人』がアスリートに必要なのかは疑問に思う部分がある。
アスリートとして本当に大事なことは努力し、パフォーマンスにコミットして、自分の実力を上げていくこと。これも偏りがある考えかもしませんが、アスリートは何かを超越していくこと、そこに生き様が出ることに一番の魅力と価値がある。もちろん私も可愛いと思う女性アスリートがいるし、かっこいいと思う男性アスリートもいる。でも、『綺麗』『かっこいい』だけにならない魅力をアスリートの皆さんは持っている。どんな人がいてもいいけど、そこは忘れないでいてほしいなと思います」
荒木「きっかけにはなりますね。『あ、この人可愛い、競技を見てみよう』って。スポーツに関心がない人も世の中にたくさんいるので。『可愛い』がスポーツの魅力を伝える入口のひとつになることもあると思います」
伊藤「ファンになるのはいいですよね。男子のバレーは今、かっこいい選手が多いし、女性ファンが物凄く多い」
荒木「それが競技の普及になり、お金を落としてもらえると競技自体が盛り上がるし、人気に繋がるといいなと思います」
伊藤「ただ、選手本人が苦しまないでほしいですね。その人の人生だから。だから、そればっかりにならないようにとIOCもガイドラインを設けている。バランスが大事ですね」