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WBCで拡散「台湾人が東京Dにゴミ放置!」 記者が足を運ぶと…“嘘”の痕跡、AI時代の落とし穴

「台湾人が東京ドームにゴミを放置した」――。そんな投稿が、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の最中にSNS上で拡散された。添えられていたのは、座席に弁当やペットボトルが散乱した1枚の写真。しかし、大会を取材する記者が現場に足を運び、同じ位置から確かめると、いくつもの違和感を覚えた。同時にスポーツイベントと現代のネット文化の新たな課題が浮かび上がった。

WBC台湾代表【写真:小林靖】
WBC台湾代表【写真:小林靖】

スポーツイベントと現代のネット文化の新たな課題

「台湾人が東京ドームにゴミを放置した」――。そんな投稿が、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の最中にSNS上で拡散された。添えられていたのは、座席に弁当やペットボトルが散乱した1枚の写真。しかし、大会を取材する記者が現場に足を運び、同じ位置から確かめると、いくつもの違和感を覚えた。同時にスポーツイベントと現代のネット文化の新たな課題が浮かび上がった。

 5日に開幕したWBCの1次ラウンド・プールC。東京ドームで、日本、台湾、韓国、豪州、チェコの5か国が熱戦を繰り広げている。そんな中、7日頃からX上である画像が拡散された。

「台湾人が東京ドームで試合を終えた後、一面のゴミが残されていた!」と記し、画像を添付していた。三塁側内野席とみられるエリアで清掃員が作業する様子が写し出されている。座席や足元には、食べかけの弁当、飲み残しのペットボトルが大量に散乱していた。画像には、さらに「東京ドームで醜態を晒す 台湾人の『三大悪習』が物議を醸す あちこちゴミだらけで、トイレは見るも無残なありさま」と煽情的なキャプションもある。

 しかし、実際に記者が画像と同じように三塁側内野席から見渡すと、いくつもの違和感を覚えた。

 まず、座席の構造だ。東京ドームの座席は跳ね上げ式で、人が座っていない時は座面が上がる仕様。拡散された画像は、常に下りた状態の固定式に見える。本来なら視界に入るはずの左翼ポールも確認できず、球場内の看板の文字も実際のものとは異なる。複数の不自然な点から、明らかなフェイク画像だ。

 球場に行き慣れた野球ファンなら「どこかおかしい」とすぐに気づくかもしれない。そうでないユーザーや海外のファンにとっては、本物かどうかを見分けるのは簡単ではない。

 その後、該当の投稿には誤解を招く可能性のある情報に背景情報を追加する「コミュニティノート」がつけられた。時間を追うごとに、台湾とみられるユーザーから「これは偽物!」「信じない。私が球場を離れた時、みんながごみを片付けていて、写真のようなことはなかった。濡れ衣だ」「AIでまたデマを流している」という指摘が相次いだ。

 ここ1年ほどで生成AIが急速に進化し、誰でも簡単にリアルな画像を加工できるようになった。生成AIが広く普及して以降、初めて開催されるWBCでもある。トレンドに上がりやすい国際舞台では、こうした情報が瞬時に世界へ広がる。スポーツという特性上、勝敗をめぐる感情も高まりやすく、特定の国やファンを貶める情報が拡散されるリスクもある。今回の一件は、その危うさを示す出来事といえる。

 2026年はスポーツイベントが目白押しだ。ミラノ・コルティナ五輪、WBCに続き、6月にはサッカー・ワールドカップ(W杯)も控える。SNSでは、1枚の画像が瞬く間に世界へ広がる。だが、現地に立つと、そこに広がる景色はまったく違うこともある。スポーツの熱狂が世界を結ぶ時代。同時に、私たち一人ひとりの「情報を見る目」もまた、試されている。

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