各コンテストで輝く選手たちを紹介「ボディコンテスト名鑑#26　田中裕子」

　9日に栃木県総合文化センターで開催された日本ボディビル・フィットネス連盟（JBBF）主催の年齢別日本一を競うコンテスト「オールジャパン・マスターズフィットネス・チャンピオンシップス」。ビキニフィットネス45歳以上160センチ以下級で5位入賞した46歳・田中裕子は国指定難病・潰瘍性大腸炎と闘いながら、競技を続けている。病気が理由で食物繊維が摂れないなど、通常の選手とは異なるハンデを抱えながら、トレーニングに励む理由と原動力は――。涙ながらに、その想いを語ってくれた。

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――オールジャパンの決勝のステージに立ち、5位入賞です。今の率直な気持ちは。

「レベルが高いオールジャパンでIウォークができたのがとてもうれしくて、楽しかったし、最高です。メダルは欲しかった気持ちもありますが、やり切ったと思えるし、今大会に向けてウォーターローディングの調整法を変えたことも上手くいったと思っているので、今できるベストを尽くせました」

――競技歴についてもお聞きします。トレーニングを始めたのは39歳とか。

「ただただ中年太りで。ウエストもまったくなく、こけしちゃんみたいな体型で（笑）。『しょうがない、やるか！』と。体重は53キロくらいでしたが、背が小さい（154.5センチ）ので、お腹と背中にいっぱいお肉がついてました。今は大会当日なので43.5キロくらい。ウエストも70センチから53センチになりました」

――美容師として働き、仕事との両立も大変ですね。

「美容師は25年間やっていて、15年前から独立しています。休みは週1回。仕事が終わってから夜9時～11時半までトレーニングして帰って来る生活です。両立はもう『頑張るしかない！』と思ってやっています」

――もともと病気を患っていて、今も闘病しているそうですね。

「潰瘍性大腸炎という国指定の難病で、治療を続けています。症状的には血便が出たり、お腹が張ったり、下痢が止まらなかったり。なので、食物繊維が摂れないなど、普通の選手と同じ食事ができません。他の人と同じ強度でトレーニングをすると疲労も良くないので、疲労を抜くことを今シーズンは気をつけています」

――発症したのも競技を始める前の35歳。病気がありながらも競技に挑戦しようと思った理由は。

「人生の記念に1回だけ大会に出ようと思ったんです。『私の人生、楽しかったな』って死ぬ時に思えたらいいなと思って。だから、面白いことを1回くらいやってみたかった。当時のトレーナーさんも大会に出ている方で、そういう後押しもあり、40歳で大会に出たのが最初です」

――「1回だけ」がきっかけになり、困難を抱えながら諦めずに競技を続ける原動力は何だったのでしょうか。

「（涙ながらに）諦めようかと思ったことは何回もあります……。でも、なんとか食らいついています。一番はステージに立った時に『私、生きてる！』って感じがするんです。それに人生観も変わりました。楽しいのが一番。人生一度きりだから、やりたいことをやろうと。すごく引っ込み思案だけど、明るくなったと思います」

――今後の競技や人生で達成したいことはどんなことでしょうか。

「いつまで選手でいられるかは分からないですが、今はポージングを教えさせてもらっていたりするので、何かしらで競技に関わっていくこと。最終的にはお年寄りになっても自分の足で歩いて最後までトイレに行く（笑）。それくらい健康でいたいですね」

――田中選手の頑張りは潰瘍性大腸炎を患っている人の励みになります。何か伝えたいことはありますか？

「何事も諦めないこと。そして、自分に合っているものを探すことが大切だと思います。確かに、みんなと同じようにはできないかもしれないけど、私だったらこれならクリアできるというものがある。なので、自分に合ったものを探せれば、前に進めると思います」