最後まで止まぬアスリートへの誹謗中傷 「法改正しないと永遠に…」パリ五輪で残された重い宿題
パリ五輪は11日の閉会式で17日間の熱戦が幕を閉じた。大会期間中には見る者の胸を打つ感動のシーンや、あっと驚くようなアクシデントなど、さまざまな場面があった。そんな出来事を改めて振り返る。今回は誹謗中傷。今大会はアスリートに向けられた言葉の刃が問題視され、国内外で議論が深まった。
パリ五輪終了、大会の名場面を振り返る
パリ五輪は11日の閉会式で17日間の熱戦が幕を閉じた。大会期間中には見る者の胸を打つ感動のシーンや、あっと驚くようなアクシデントなど、さまざまな場面があった。そんな出来事を改めて振り返る。今回は誹謗中傷。今大会はアスリートに向けられた言葉の刃が問題視され、国内外で議論が深まった。
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大会序盤にはこんなことがあった。男女混合競歩リレーに専念するため、女子20キロ競歩を出場辞退した柳井綾音はXで「今回の20kmWの辞退の件ですが、たくさんの方から厳しい言葉に傷つきました」と誹謗中傷を受けたことを明かし、「批判は選手を傷つけます。このようなことが少しでも減って欲しい」と訴えた。
柔道男子60キロ級では、永山竜樹が直前に「待て」がかかった後も絞め続けられ、不可解判定で一本負けを喫したことに端を発し、対戦相手のフラン・ガルリゴス(スペイン)に心無い声が殺到。永山自身が、SNSで「お互い必死に戦った結果なので、ガリゴス選手への誹謗中傷などは控えて頂きたいです」と呼びかける事態に。その後、友好的な2ショットも掲載し、沈静化に努めた。
同じく柔道女子52キロ級では、まさかの2回戦敗退を喫した阿部詩の号泣に対し、批判の声が多数書き込まれた。2000年シドニー五輪競泳日本代表の萩原智子さんが「言葉を発する前に少しだけ考えてみませんか?」と自身のXに投稿し、誹謗中傷に警鐘を鳴らした。
団体競技でも男子バレーボール準々決勝、最終セットの正念場でサーブミスをした小野寺太志が誹謗中傷を受けたことを明かし、日本バレーボール協会の川合俊一会長は「怒りに任せた暴力的なコメントやアスリート本人の尊厳を傷つけるようなメッセージ。悪口をいうことで人を傷つける行為、いわゆる『誹謗中傷』を見過ごすことはできません」などと声明を発表した。
ほかにも、日本に不利な判定をしたとして当該審判のSNSが荒らされる、パリ五輪終了を伝えた在日フランス大使館のSNSにも心無い声が寄せられるなど、誰でも発信できる便利さゆえの問題が頻発した。こうした実情を踏まえ、卓球の五輪金メダリスト・水谷隼氏は「死ね!」「くたばれ!」「消えろ!」「お前嫌われてんだよ」など、自身のSNSに届いた実際のメッセージを公開。「SNSに精通してる人が法改正やルール変えていかないと永遠に終わらない」と訴えた。
こういった問題に対し、スポーツ庁も対策に苦心してきた。22年冬季北京五輪直前には、室伏広治スポーツ庁長官が誹謗中傷に関する声明を発表。「アスリートも一人の人間」と表現した上で、選手の尊厳を傷つけたり、根拠のない憶測をもとに非難する言葉などについて、書き込み・投稿しないように呼びかけた。パリ五輪開幕前には「アスリートへの性的ハラスメント及び誹謗中傷の防止に向けた取組に関する調査結果」を公式サイトで公開したが、事態の改善には至らなかった。
性別騒動で世界的議論を呼んだボクシング女子66キロ級金メダリストのイマネ・ケリフ(アルジェリア)はSNSで誹謗中傷を受け、訴訟を開始したと海外メディアは伝えており、問題は日本だけにとどまらない。世界の注目を浴び、熱狂を呼ぶ五輪でアスリートを言葉の刃からどう守るのか、スポーツ界に残された重い宿題だ。
(THE ANSWER編集部)