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「0秒01差」で分かれる天国と地獄 プールの底しか見えない、単調な水泳の練習から育まれる人生の強さ――競泳・坂井聖人

スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト「THE ANSWER」はパリ五輪期間中、「シン・オリンピックのミカタ」と題した特集を連日展開。これまでの五輪で好評だった「オリンピックのミカタ」をスケールアップさせ、大のスポーツファンも、4年に一度だけスポーツを観る人も、五輪をもっと楽しみ、もっと学べる“見方”をさまざまな角度から伝えていく。「社会の縮図」とも言われるスポーツの魅力や価値が社会に根付き、スポーツの未来がより明るくなることを願って――。

五輪銀メダリストの坂井聖人が考える「競泳が人を育てること」とは【写真:Getty Images】
五輪銀メダリストの坂井聖人が考える「競泳が人を育てること」とは【写真:Getty Images】

「シン・オリンピックのミカタ」#56 連載「私のスポーツは人をどう育てるのか」第5回

 スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト「THE ANSWER」はパリ五輪期間中、「シン・オリンピックのミカタ」と題した特集を連日展開。これまでの五輪で好評だった「オリンピックのミカタ」をスケールアップさせ、大のスポーツファンも、4年に一度だけスポーツを観る人も、五輪をもっと楽しみ、もっと学べる“見方”をさまざまな角度から伝えていく。「社会の縮図」とも言われるスポーツの魅力や価値が社会に根付き、スポーツの未来がより明るくなることを願って――。

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 今回は連載「私のスポーツは人をどう育てるのか」。現役アスリートやOB・OG、指導者、学者などが登場し、少子化が進む中で求められるスポーツ普及を考え、それぞれ打ち込んできた競技が教育や人格形成においてもたらすものを語る。第5回は、2016年リオデジャネイロ五輪の競泳男子200メートルバタフライで銀メダルを獲得した坂井聖人。0秒01の差で天国と地獄を味わってきたスイマーは、記録と戦い続ける日々を過ごしてきたことで、第二の人生においても大切な強さを得ることができたと振り返る。(取材・文=牧野 豊)

 ◇ ◇ ◇

 8年前の2016年、リオデジャネイロ五輪の競泳男子200メートルバタフライで銀メダルを獲得した坂井聖人。決勝レースの残り50メートルでは見事なラストスパートを見せ、オリンピック史上最多の通算23個の金メダルを手にした「怪物」マイケル・フェルプス(米国)を追い詰めた。金メダルにわずか0秒04まで迫った泳ぎは、今もなお多くの人々の記憶に残っている。

 坂井は、今年5月に現役引退を表明した。

 福岡のKSG柳川で2歳から水泳を始め、小学校から競泳選手として活動。中学、高校と国内トップクラスのバタフライスイマーとなり、早稲田大学3年時に五輪のメダリストになった。その後は肩の怪我などもあり、世界の頂点を争うステージに戻ることはできなかったが、28歳で引退するまで水のなかで過ごしてきた。

 坂井に今、改めて競泳を通して学んだこと、自分が成長できたことを問うと、「実は」と微笑しながら答え始めた。

「昔、自分はやんちゃなほうでして(笑)。家でもプールでも、学校でも怒られているような子どもでした。水泳を2歳で始め、小学生で選手コースに入ったと言っても、多くの人と同じように習い事の1つとしか思っていなかったんです。でも、水泳で少しずつ結果が出てくると次の目標が出てくる。その目標を達成するためには、自然と厳しい練習に向かっていくようになるわけです。

 おそらく選手コースに移った最初のほうは、やる気のなさそうな態度で泳いでいたと思いますよ(笑)。それでコーチにめちゃくちゃ怒られる。でも、やんちゃなんだけど、怒られることは嫌じゃないですか。だから、自然と更生して、選手としても成長していったのだと思います(笑)」

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牧野 豊

1970年、東京・神田生まれ。上智大卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。複数の専門誌に携わった後、「NBA新世紀」「スイミング・マガジン」「陸上競技マガジン」等5誌の編集長を歴任。NFLスーパーボウル、NBAファイナル、アジア大会、各競技の世界選手権のほか、2012年ロンドン、21年東京と夏季五輪2大会を現地取材。22年9月に退社し、現在はフリーランスのスポーツ専門編集者&ライターとして活動中。

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