芳田司、宿敵出口クリスタに苦杯で銀 東京五輪決勝で雪辱へ「今度は私が勝ちます」
柔道世界選手権の3日目が27日、東京・日本武道館で行われ、カナダ国籍を取得した女子57キロ級の出口クリスタ(日本生命)が延長戦の末に技あり(谷落)を奪い、金メダルを獲得した。決勝では高校時代からのライバルだった日本代表の芳田司(コマツ)に勝利。昨年大会は準決勝で敗れた相手に借りを返した。
長年のライバル関係の2人が決勝で激突
柔道世界選手権の3日目が27日、東京・日本武道館で行われ、カナダ国籍を取得した女子57キロ級の出口クリスタ(日本生命)が延長戦の末に技あり(谷落)を奪い、金メダルを獲得した。決勝では高校時代からのライバルだった日本代表の芳田司(コマツ)に勝利。昨年大会は準決勝で敗れた相手に借りを返した。
序盤から技を掛け合う緊迫した展開。積極果敢に攻める芳田に対し、出口は守勢に回った。残り32秒で出口に指導が付く。決着は4分ではつかず、ゴールデンスコア方式の延長に突入した。
芳田の応援団からは「行け、行け、芳田!」とリズムよく手拍子が鳴る。なかなか攻勢に転じられない出口は、延長1分30秒で寝技から腕を取られた。必死で守ると、続く同2分11秒には芳田に指導が付いた。直後の同2分26秒に出口が谷落で技あり。計6分26秒の火花散る戦い。出口はほっとした表情で呼吸を整えて畳を降りる。大歓声の中で勝敗が決し、観戦に訪れた大相撲の横綱・鶴竜も拍手で両者の健闘を称えた。
出口はカナダ出身の父と日本人の母を持ち、長野生まれ。地元の誠心館道場で柔道を始めた。松商学園高時代は全日本ジュニアで芳田に勝って優勝。だが、次第に力で押す柔道が通じなくなり、大学では優勝から遠ざかった。
芳田らが世界大会で結果を残す一方で、自分は16年講道館杯で2回戦敗退。五輪への夢を諦めかけた頃に、カナダ代表コーチからの誘いや支えてくれる周囲の後押しもあって、2年前に父の母国・カナダへの国籍変更を決断した。全ては夢の五輪に出場するためだった。
日本育ちの23歳。山梨学院大の途中までは日本の強化選手だった。世界ランク2位まで上り詰めて迎えた今大会。心ない声が聞こえた時もあったが、そんなものを吹き飛ばす世界一となった。
一方、宿命のライバルに敗れた芳田にとっては悔しい結果に。試合後のテレビインタビューに立つと、決勝については「もちろん、出口選手が来ると思っていた」と明かした上で「初戦から調子が上がらず、準決勝も勝って調子を持ってこられたら良かったけど、まだまだ力が足りませんでした」と敗戦を受け止めた。
今後も出口とのライバル関係は続く。「東京オリンピックでまた決勝で戦いたい。今度は私が勝ちます」と1年後のリベンジを誓っていた。
(THE ANSWER編集部)