希代のクセ者がつかんだ涙の賜杯 偉大な義父、横綱の引退…史上初の偉業の裏にあった「強いんだ」の思い【春場所名場面】
大相撲三月場所(春場所)は9日にエディオンアリーナ大阪で初日を迎える。新横綱に昇進した豊昇龍(立浪)が今場所も賜杯を抱くのか。それとも、琴櫻、大の里の大関陣や新関脇の王鵬が次を狙う足掛かりを作れるのか注目が集まる。ここでは“荒れる春場所”と言われる過去の三月場所を振り返る。2000年は“希代のクセ者”として土俵をにぎわせた貴闘力が初優勝。史上初の幕尻での優勝という偉業を成し遂げた。

大相撲春場所・9日初日
大相撲三月場所(春場所)は9日にエディオンアリーナ大阪で初日を迎える。新横綱に昇進した豊昇龍(立浪)が今場所も賜杯を抱くのか。それとも、琴櫻、大の里の大関陣や新関脇の王鵬が次を狙う足掛かりを作れるのか注目が集まる。ここでは“荒れる春場所”と言われる過去の三月場所を振り返る。2000年は“希代のクセ者”として土俵をにぎわせた貴闘力が初優勝。史上初の幕尻での優勝という偉業を成し遂げた。
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貴乃花、若乃花、貴ノ浪、安芸乃島といった人気と実力を兼ね備えた関取が揃った二子山部屋勢の中で、異色ともいえる存在感を示していた貴闘力。大関に昇進することは叶わなかったものの、上位との対戦では何度も波乱を演出してきた。若貴兄弟のライバルだった曙に対しては滅法強く、曙を倒した場所での三賞受賞も多数。ただ2000年は初場所で負け越し、春場所は幕尻となる前頭十四枚目まで降下した。
十両陥落の危機、さらに引退もささやかれ始めて迎えた春場所は下馬評を覆し、初日から土つかずの12連勝。快進撃に審判部は本来なら番付的に当たることがない武蔵丸、曙との横綱戦を編成した。2人には敗れたものの、まだ単独トップだった千秋楽では関脇・雅山戦で勝てば優勝という展開。注目の一番は立合いから一気に攻め込まれて土俵際に追い詰められたが、上手く体を入れ替えて逆転の送り倒しで、史上初の幕尻優勝を成し遂げた。
初土俵から103場所での幕内優勝は史上1位のスロー記録。義父は当時史上1位の幕内優勝32回を誇った大鵬。館内で見守った妻や子供たちの前で初めて賜杯を抱き、大粒の涙を流した。インタビューで「父ちゃんだって強いんだぞ、という記録が作れた」と口にしたフレーズはファンの感動を呼んだ。
この春場所で、部屋の看板だった横綱・若乃花が29歳の若さで引退。32歳の貴闘力にとっても「思うところはあった」という。世紀末の春場所は記録と人情に彩られた土俵だった。
(THE ANSWER編集部)