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激闘を制して誕生した“小さな”王者たち 【加藤未央のダノンネーションズカップ取材記~2日目】

「0得点32失点」から得られるもの

 このダノンネーションズカップは試合だけじゃなく、いろんなイベントも同時に行われていて大会を一層盛り上げている。アクティビティエリアといって、ボールのスピード・キックの精度・ドリブルを競うゲームができたり、ダノンヨーグルトのサンプリングブースが設けられていたりと楽しみ方はさまざまだ。

 大会2日目には、元サッカー日本代表の前園真聖さんを招いてのトークイベントが行われた。イベントが始まる直前になると、多くの人でブースの周りは埋め尽くされていた。「本当にゾノが来るの?」という子どもたちの会話が聞こえてくる。

「僕が子どもの頃は、Jリーグやプロのサッカーリーグもありませんでしたし、世界に行ける大会もありませんでした。目標を『世界』と言える今の子どもたちを、とても羨ましく思います」と切り出す前園さん。子どもたちにとって、その話は“ゾノの昔話”ではないのだろう。耳を傾ける表情は、真剣だった。

「失礼ですが、この大会に参加しているチームの中でも飛び抜けて失点をされていますよね……」

 2日間を通して全部の試合を終えた直後の、岩瀬フットボールクラブの植村広生監督にそう話しかけた。「失礼ですが」と前置きしながら本当に失礼なことを言ったものだと、自分でも口にした瞬間思ったけれど、植村監督からは明るい表情で「今の実力を考えたら想定内でした」と返ってきて、ちょっと驚いた。

「いろんなチームと戦うことで自分たちの実力が知れますし、そこから自分たちが何をするのかということが勉強になりました」と、なんだか嬉しそうだ。2日間通して試合数は5、失点は32、得点は0だった。

「いっぱい失点してしまったけど、仲間たちとあきらめないという気持ちで試合ができて良かったです」と話すのは、まだあどけなさの抜けない5番のキャプテン・和田拓真くん。私の質問をしっかり聞いて丁寧に答えてくれる。話している途中で一瞬ハッとした表情をしたかと思ったら、かけていたスポーツ用のメガネをさっと外した。こういうところに普段の子どもの躾って出るのだな、なんて感心する。

 お兄ちゃんがサッカーを楽しそうにやってるのを見て自分もサッカーを始めたという和田くんの将来の夢は、病理医になること。プレパラートや顕微鏡を使うのが楽しそうだからだと、はにかみながらもしっかりと自分の言葉で答えてくれる。インタビューを終えるとペコリとお辞儀をして、さっと走って行く和田くん。その姿から、しばらく目が離せなかった。

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加藤 未央

1984年1月19日神奈川県生まれ。
「ミスマガジン2001」グランプリに輝き、TBS「スーパーサッカー」のアシスタントなどタレントとして活躍すると同時に、東京農業大学応用生物科学科バイオサイエンス学科を卒業するなど多彩な才能を発揮。
現在はフットサル全国リーグ「Fリーグ」のオフィシャル報道官に就任するなど、スポーツライターとしてもさまざまなメディアで活躍中。

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