激闘を制して誕生した“小さな”王者たち 【加藤未央のダノンネーションズカップ取材記~2日目】
拮抗した試合をものにする伝統
決勝トーナメントで拮抗した試合を繰り広げていたのは、三菱養和サッカークラブ巣鴨ジュニアの子供たち。準々決勝へと駒を進めるには勝ち点1、1つのゴールが大きく影響をする。
横河武蔵野フットボールクラブジュニアとのゲームで、三菱養和は1点を追いかけていた。残り時間もあとわずかに迫っているなか、大槻邦雄監督は30番の並木雄飛くんを投入する。するとすぐさま左サイドからのクロスに合わせて並木くんがゴール。大槻監督の采配がピタリとはまった。試合はそのまま1-1で終了。同点弾を決めた並木くんと、最高のクロスを出した32番の福永竜也くんにゴールシーンを振り返ってもらった。
「負けていたから、とにかく前重心にしてボールを出すようにしていました」と話すのは福永くん。「泥臭いゴールでもいいから、自分が決めてやるという気持ちでした」と話す並木くんは嬉しさが顔からこぼれている。
ふと、昨年の出来事がよみがえる。昨年の観戦記でも書かせてもらった、同じく三菱養和の洪くんと篠原くんのことだった。試合終了間際に決めたゴールを嬉しそうに話す二人のことを、私はたぶん一生忘れない。三菱養和は子どもたちの個性を活かしながらも、チームとして連係させるのが非常にうまいと思う。大槻監督に話を聞くと、コミュニケーションをとても大事にしていると教えてくれた。チームを率いて4年目になる大槻監督は、このダノンネーションズカップに出ることでその年のチームの強さの基準が分かるという。
「綺麗なプレーも大事だけれど、とにかく点を取るという泥臭さも大事なんです。私たちは地域の代表としての誇りを持ってこの大会に出ていますから」
自身もこの三菱養和出身だという大槻監督から子どもたちに、その“泥臭さ”は脈々と受け継がれている。「まさに養和魂ですね」と言うと、「その言葉、本当にあるんですよ」と笑う監督。チームみんなの気持ちの入った同点弾は、結果的に三菱養和を準決勝へと導くことになった。