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慶大の難関・総合型入試合格 在学中に金メダル「勉強は嫌いじゃない」3学年上の内容を兄妹で競った文武両道の礎――フェンシング・飯村一輝

難関とされる慶大の総合型入試で合格を掴んだ秘訣があった【写真:落合直哉】
難関とされる慶大の総合型入試で合格を掴んだ秘訣があった【写真:落合直哉】

難関とされる慶大総合型選抜入試をくぐり抜けた秘訣

 総合政策学部は慶大の湘南藤沢キャンパス、通称「SFC」に属し、日本で初めてAO入試を導入したこともあり、より先進的で多様な学生が集まる環境にあった。「主将だった中高時代、顧問の先生がフェンシング未経験。自分で練習メニューを考えて全て決めていた」。そんな自由と創造で育まれた感性がSFCと合致した。

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 フェンシング界で独自のキャリアを切り開いた太田雄貴も意識した。「フェンシングだけじゃ将来食べていけないことは知っていた。(父が指導する)近い環境に太田さんという成功例があって、早くからセカンドキャリアやダブルキャリアを考えて、少しでも多く選択肢を残しておこう、と。2つを一番高いレベルでやろうとなったら慶應でした」。慶大総合政策学部OBの陸上短距離・山縣亮太と高2の冬に食事する機会があり、より想いを深めた。

 しかし、「全国大会でベスト8以上」など一定の条件を満たせば合格しやすいスポーツ推薦が慶大にはない。飯村が受験した総合型選抜はスポーツに限らず、語学などの特定の能力に秀でた高校生が志願。甲子園やインターハイの全国大会で活躍した全国区の選手ですら不合格になり、泣く泣く別の進路を辿ることも少なくない。

 実際、フェンシング部関係者からも「合格の保証はないし、留年・浪人の可能性もある。それが引っ掛かるなら(推薦で)他の大学に行った方がいい」と助言されたが、飯村は揺るがず。1次選考は書類審査、2次選考は1人30分の面接試験。

「書類審査は『1人親世帯の貧困』をテーマにして、フェンシングについては自由記述で触れました。面接は志望理由を一切聞かれずに焦って、『一番関心のあるニュースは何ですか?』の質問に、衆院選と(自民党の)総裁選を間違えて答えてしまって……。『全然、ニュースに興味のないヤツだな』と思われ、深掘られたけど、耐えるのに必死で、他に何を聞かれたかまったく覚えていません(笑)」

 トランポリンに打ち込んできた同級生の合格者は「トランポリンの動作解析」について書類で論じたといい、自分の得意領域をアピールするか否かに正解はない。本人は「今となっては、ああいうのを圧迫面接と言うのかな」と面接の対応に合格の理由があったと分析する。

「圧迫面接も何をどこまで考えているか、その環境下で言語化できるかが見られる。肝っ玉が据わっている点が良いように取られたのかな。もともと、僕はその場で考えて喋ることが多い。幼い頃から海外遠征も経験して、取材される機会も増えて、記者さんと話すことも言いたいことをべらべら言う感じで、対人能力も培われた。フェンシングは一瞬の判断が問われるスポーツ。考えを言語化する能力もちょっとだけ長けていたのかもしれないです」

入学して実際に感じる慶大のメリットとは【写真:落合直哉】
入学して実際に感じる慶大のメリットとは【写真:落合直哉】

 実際、このインタビューもレスポンスが早く、頭の回転の速さが際立った。そして、主旨を汲んで回答にズレが少なく、具体例も添える。終始カメラで撮られ、大人たちが複数見守る。場慣れした、経験あるアスリートでも、そう出来ることではない。当時の面接官の心情は知る由もないが、当人の分析には深く頷ける。

 実績ある高校生アスリートならスポーツ推薦で、練習環境、指導の質、卒業後の進路などを考えて選ぶことが一般的。一方で、飯村のようにスポーツだけにとらわれず考える場合もある。入学してみて今後のキャリア形成における慶大のメリットをどう感じるか。聞くと、飯村は「圧倒的な人脈ですね」と包み隠さず語る。

「僕が慶應で一番大切にしたいと思っていたのが出会いでした。縦・横・斜めの全て、今までの環境では出会えなかったような方々と繋がれるすごい人脈がある。(OB会の)『三田会』って世界中に(ネットワークが)あるんです。もちろん人脈以外に魅力もあるけど、自分の中の可能性を引き上げてくれる人と出会えて毎日が楽しい。慶應にはそういう魅力があります」

「人脈」や「コネ」といった類の言葉は、ともすれば毛嫌いされる風潮がある。しかし、人と人とのつながりで成り立つ社会において、人生そのものを豊かにする上で紛れもない武器である。競技人生に限りがあり、引退後のキャリアが課題となりやすいアスリートにとってはなおさら大切なことだ。

 そして、飯村は学業と競技を高い次元でこなし、在学中に金メダリストになった。

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