金メダリストがなぜ市役所職員に? 転機は新聞広告…「人は変われる」レスリングに学んだ人生の教訓――レスリング・土性沙羅
レスリングとの出会いが変えた人生
怪我の影響もあって2023年に引退を決断したが、レスリングとの出会いが人生を大きく変えてくれた。
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勉強は好きじゃなかった。運動も、例えば球技などはむしろ苦手だった。これといって特技のない女の子は人生の道標を見つけ、それは自分を照らしてくれる灯りになった。
「私ができたのはレスリングだけ。レスリングがなかったら何も残せていない人間だと思いますし、今の人生はありませんでした。楽しいこと、嬉しいことだけではありません。悔しいこと、悲しいこともありました。金メダルだけじゃなくて挫折も経験しました。でも、だからこそ負けた選手の悔しさを伝えることができる。マットの上に立っている時だけは注目されて嬉しかったですし、見られることに対しても緊張しませんでした。レスリングが自分に自信を付けさせてくれました。私に光を当ててくれる星のような存在です」
マットから離れても、想いは変わらない。パリ五輪は1人のファンとして楽しむのだという。
「軽量級から重量級までメダルが期待できます。楽しみましょう」
立場を変えて初めて行われるスポーツの祭典を、心の底から楽しむつもりだ。
■土性沙羅 / Sara Dosho
1994年10月17日生まれ、三重県出身。小学2年生の時に吉田沙保里の父・栄勝氏の一志ジュニア教室でレスリングを始める。すぐに頭角を現すと高校、大学で何度も全国制覇を経験。21歳の時に2016年リオデジャネイロ五輪69キロ級の代表に選ばれると、五輪初出場で金メダルを獲得した。その後も17年の世界選手権やアジア選手権で優勝するなど結果を残し、21年東京五輪にも出場したが3位決定戦で敗れてメダル獲得ならず。23年3月に現役引退。故郷の三重県松阪市へ戻り市役所職員に転身した。
(藤井雅彦 / Masahiko Fujii)