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衝撃メジャーデビュー、今永昇太のプロ人生を変えた72時間 A4一枚の紙を巡り揺れた“原点”

米大リーグのカブス・今永昇太投手が1日(日本時間2日)、本拠地ロッキーズ戦で6回2安打無失点と好投し、メジャー初登板初勝利。5回2死までノーヒットで9三振を奪う衝撃の快投だった。駒大から2015年ドラフト1位でDeNA入団。球界を代表する投手に成長し、WBC日本代表として世界一も味わった30歳のプロ人生の原点には意外な出来事があった。大学時代を取材した記者がエピソードを明かす。(文=THE ANSWER編集部・神原 英彰)

本拠地ロッキーズ戦で好投を見せたカブスの今永昇太【写真:ロイター】
本拠地ロッキーズ戦で好投を見せたカブスの今永昇太【写真:ロイター】

メジャー初登板初勝利を挙げた今永の大学時代のエピソード

 米大リーグのカブス・今永昇太投手が1日(日本時間2日)、本拠地ロッキーズ戦で6回2安打無失点と好投し、メジャー初登板初勝利。5回2死までノーヒットで9三振を奪う衝撃の快投だった。駒大から2015年ドラフト1位でDeNA入団。球界を代表する投手に成長し、WBC日本代表として世界一も味わった30歳のプロ人生の原点には意外な出来事があった。大学時代を取材した記者がエピソードを明かす。(文=THE ANSWER編集部・神原 英彰)

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「あの時がなければ、今の自分はいない」

 今永昇太がかつて、そう語った出来事がある。

 駒大時代、ドラフト1位候補として迎えた大学4年のラストイヤー。左肩痛を発症し、春のシーズンは全休。秋に復帰しても打ち込まれ、涙した試合もある。自信を失い、3社から誘いを受けた社会人野球入りを真剣に考えた。

 プロ入りに提出が義務付けられるプロ志望届の締切目前。同じリーグの青学大・吉田正尚(現レッドソックス)ら大学生の目玉候補が早々提出したのとは対照的に、監督と話し合っても結論が出ない。部屋に一人こもり、3日間悩んだ。

「何のための大学4年間だったのか。社会人に行くために福岡から出てきたのか。それは違う」。全国的には無名に近い存在だった高校生が上京する動機となった「プロ野球選手」の志を、最後は貫いた。

 提出したのは締切2日前。A4一枚の紙に頭を悩ませた時間の分だけ覚悟は深まった。「行く以上は即戦力で活躍する」と。1位指名されたDeNA入団1年目、プロ人生の原点となった72時間を振り返ったのが、冒頭の言葉だった。

「人生で一番考えた3日間。あの時、悩むことなく、どこかに拾ってもらって活躍できるだろうと、いい加減な気持ちで決めていたら今の自分はいない」

 のちの華々しい経歴からすると、意外に思えるプロ入りの経緯。しかし、その出来事こそがキャリアの支えになったように思える。もし、社会人野球に進んでいたらまた別の人生が待っていたのかもしれない。

 スポーツ紙のアマチュア野球担当だった筆者が初めて今永を取材したのが大学生の頃。一般客も行き交う神宮球場の試合後の通路、盛り上がったのはたしか「ももいろクローバーZ」で誰推しかという話だったと記憶している。

 渋谷の安いしゃぶしゃぶ屋に連れて行っても喜んでくれた純朴な大学生は、やがて球界を代表する投手となり、WBC決勝のマウンドに立ち、4年総額5300万ドル(約80億円)という契約でメジャーの夢舞台へ。

 そして、今日、そのプロ人生に忘れ得ぬ1勝が刻まれた。

(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)

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